105.触れたい衝動。 ページ7
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「これから戦場に出るのに、疲れた表情をしているな」
「色々とあったので…。」
心配そうに私を見つめる壁さんに、大丈夫ですと笑ってみせた。
今は父上の事を考えてる場合じゃない。この戦いで躓けば、今後の私の運命は…父上の花嫁…。
「不安なのは分かる。私も初陣の時は怖くて逃げ出したくもなったからな」
「その不安だけじゃないんです。私の場合は…。」
「よくわからないが。A殿も久しぶりに会ったらどうだ」
「会う?誰かここに来るんです、」
「壁のあんちゃん。さっきは……A…?」
「信…?」
私の姿に驚く信は、嘘だろうと呟いた。
「信もこの戦に、え、ちょっと!?」
無言のまま私の側に歩いてきた信は、私の腕を乱暴に掴むと抱き締めてきた。加減なしに強い力で抱きしめられた私は、痛いと口にしても信はその力を弱めてくれない。
「信…っ」
「すげェ会いたかった。お前が側にいない間も、ずっとお前のことだけ思ってた」
「う、うん…。」
前に抱きしめられた時よりも信の背は伸びていて、私を抱き締めてくる腕も逞しくなっていて。何だか、男らしくなった信の姿に胸がドキッとした。
「信、逞しくなったね」
「自分では実感ねェけど。お前がそう言うならそうなのかもな。Aは…その…。」
「私は変わらないでしょう?」
「そんなことねェよ…。昔からお前のことは可愛いと思ってたけど、今はなんて言うか、さらに磨きがかかって…キレイになったと思う」
「え、本当に?」
「嘘ついてどうすんだよ」
抱きしめていた私の体を離した信はじっと私を見つめ、顔を近づけてきた。息が触れあう程の距離。お互いの唇が重なるまであと数センチ。信の喉がゴクリと鳴る。
「コホン!お前ら、俺がいること完全に忘れているだろう」
「壁さん…!?」
慌てて信から離れた私を、信は面白くないと口を尖らす。
「壁のあんちゃん、空気読めよな」
「空気読んでたら信、お前は間違いなくA殿を襲っていただろう」
「仕方ねェじゃん…。目の前で好きな女が、それも久しぶりにあった女がキレイになってたら我慢できねェ。それが男ってもんだろ?」
力説する信に、壁さんは「気持ちわからなくもないが」と苦笑した。
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bluemoon(プロフ) - うーちゃんさん» 今晩は。只今編集作業をしている最中で、終わり次第パスワードを外させて頂きます。ご迷惑をおかけ致しますがお待ち頂けますようお願い致します。メッセージありがとうございますね。 (2022年6月15日 20時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
うーちゃん(プロフ) - こんにちは☺︎ 4から見たいのですがパスワードがかかっており見れません(>_<) 教えていただけませんか?すごく面白くて一気読みしてしまいました! (2022年6月15日 6時) (レス) id: ff65ffef2e (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - おはようございます。体調だいぶ良くなりました。お気遣いありがとうございます。書きたい衝動になっているので、自分のペースで更新していきたいと思います。コメントありがとうございました(*^^*) (2019年8月17日 10時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
Mimina(プロフ) - こんばんわ!体調大丈夫ですか?心配です。元気なったらまた素敵なお話楽しみにしています!ゆっくり休んでくださいね! (2019年8月17日 0時) (レス) id: 4c3be01646 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - Miminaさん» 返信遅くなってごめんなさい。ちょっと体調を崩してしまって、申し訳ありません。何回も読んでいただいてありがとうございます!更新頑張らないとですね。ありがとうございました。 (2019年7月31日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2019年6月9日 7時