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手の力がするりと抜けると同時、俺は彼女の肩からナイフを思い切り引き抜く。

ずる、という音とともに飛び散る赤い鮮血。肩を貫くほどだ。大量の血がナイフにもべったりとついていた。

その根源である彼女は、顔を真っ白にして苦しそうに息をついている。左肩からの出血は手に降り、ぽたりぽたりと床にまで血を残していた。



「おい、大丈夫か」


「……平気よ。これで自由が手に入れられるっていうなら……っ安いものだわ。」



右手で左肩を止血しても止まるはずはない。
この出血量ではハンカチでも止まらないだろう。


ならば……と俺がジャケットを脱ぎ捨て、シャツで止血しようとボタンに手をかけたところで、彼女から「いらない」という弱弱しい拒否が入った。



「自分で刺したのよ。君の助けはいらないわ。」


「だが……」


「いいの。……君の助けが一番欲しくないもの。」



辛そうな声の中に、はっきりとした拒否が生まれる。

俺が彼女の婚約者だから余計に手助け等されたくないのだろう。一番憎い存在である俺の手は自分で肩を刺すくらいには嫌いなのだ。


強い否定に、俺は手を伸ばそうかどうかを迷った。
躊躇の知らない俺に……迷いもなく進んだ道は絶対に正解しかなかった俺に、彼女は悩みを与えてきたのだ。


これ以上俺が手を出したら、彼女は本当に喉を掻き切るかもしれない。


そんな不安と戸惑いが脳裏に宿る。



____それでも、俺は。




躊躇した末、やはり手を伸ばし肩を掴んだ俺に、彼女はひどく驚いた顔をしていた。


逃げようと腰を浮かした彼女を抑え、自分のシャツを肩にぐるりと巻き付ける。

すぐに血を吸収した俺の白いシャツは、だんだんと彼女の赤い色に染まっていった。




「……汚れるわよ。」



「構わない。君の怪我の手当が優先だ。
……嫌いな人間に手当を受けるのは屈辱だろうが、我慢してくれ。」




きつくシャツを巻き付ければ、彼女の少し辛そうな声。

やはり相当痛みがひどいのだろう。唇を紫色に変え、血色の悪くなった彼女は、
ひどく苦しそうな顔で俺の腕をきゅっと掴んだ。




「……馬鹿ね、別に君を嫌いではないわ……。

本当に君は……可哀想な人。」




それが本音だったのだろう。



苦し紛れの中で言った最後の言葉はそれだけで。

はっきりと、俺の目を見てそれを言うと、さすがに限界がきたのか、くたりと体から力を抜いた。

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鎖月零(プロフ) - Flower*さん» flower!ありがとうございます!!短編の夢主は同じ夢主で書くのが普通だということを今の今まで知らなくて……全員バラバラにしてしまいました(笑)私も短編の方が書きやすくて軽くかけるので楽しかったです!続編頑張ります! (2018年2月26日 18時) (レス) id: e5c976073b (このIDを非表示/違反報告)
Flower*(プロフ) - 1完結(?)おめでとうございます!甘々で読んでてドキドキしてしまいました(*ノωノ) それぞれのお話の夢主ちゃんたちも個性豊かで面白し、何より短編なので読みやすいです。やっぱり零すごい……。続編の方も首を長くして待ってます! (2018年2月24日 0時) (レス) id: 4d95f4e8a2 (このIDを非表示/違反報告)
黛パフェ(プロフ) - 鎖月零さん» めっちゃ楽しみにしてます!!! (2018年2月18日 18時) (レス) id: d3f83fb575 (このIDを非表示/違反報告)
鎖月零(プロフ) - 黛パフェさん» うそぉ……本当に恥ずかしいです(笑)規制かかる系の甘々はあまり得意分野ではないのですが、楽しんでいただけると幸いです……!甘くなるように頑張ります (2018年2月18日 18時) (レス) id: a33d034fdf (このIDを非表示/違反報告)
黛パフェ(プロフ) - 鎖月零さん» 今でもたまに見たりしますよ!黄瀬くんの好きですー!規制とかあまり気にしないタイプなので別のアカウントで見に行きますねー! (2018年2月18日 1時) (レス) id: d3f83fb575 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鎖月零 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年12月17日 17時

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