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高校一年生となり、ずっと海外にわたっていた花京院Aが日本国に帰ってきたという伝達を受け、
俺達は幼いころからの許嫁だというのに、初めての顔合わせを行っていた。
初めてであった俺の許嫁は、姿かたちは聞いた通りに美しい。
金髪の腰まである綺麗な髪に、燃えるような赤い瞳。すらりとした背丈。
人形のようだという表現は彼女にこそふさわしいだろう、と思うほどに綺麗だが、顔は無表情であった。
長く海外に滞在していたせいか、緊張しているのかとその時の俺は安直な考えでその場を収めてしまっていた。
だが、今考えれば彼女は俺との見合いが死ぬほど嫌だったのだろう。
その証拠に、いざ見合いが始まろうとしたその時に、彼女は突然席を立ちあがり、自分の肩をステーキ用のナイフで貫いたのだから。
彼女の右手には強い力で握られたナイフから赤い血が滴り落ちていた。
よほど強く刺したのだろう。血は止まらない。彼女の顔にもはっきりと苦痛が読み取れた。
一瞬にして視線を集めた彼女は、痛みに耐えるよう、眉間に皺をよせ、歯の震えを止めようと奥歯をかみしめてから、また口を開いた。
「もう一度言う。……婚約は認めないわ。
この肩に刺さっているナイフが、喉に達する前に婚約は解消すると言った方がいいんじゃない」
そういうと同時、右手に再び宿る力。ぐり、という鈍い音と共に肩に刺さっているナイフが動く。
顔を白くしている俺の父と彼女の父の言葉や行動を待たずに、俺は立ち上がり、
彼女の血だらけの手に自分の手を重ねた。
「……やめたほうがいい」
「……赤司征十郎……。君は、いいの?……っこんな将来を押し付けた婚約で」
一瞬驚きに変わった彼女の瞳が、スッと睨むように細められる。
その間にも俺の手には彼女の血がだらりと流れてくる。彼女の小さな震えも、痛みを耐える汗も、噴き出る血も止まらない。
彼女の白いワンピースは、もう肘あたりまで赤黒く染まっているのだ。
その鉄サビのような匂いと、赤黒い色を視界にとらえながらも、俺は血よりも赤い彼女の瞳を見つめた。
「さぁ、俺は未来が決まっていると思っていたから。
別の未来を想像しろという方が無理難題だ。」
「……へぇ。君、人生損してるわよ。
そんな……飼い鳥みたいな人生、私はごめんだわ……っ」
彼女はふと同情するような瞳を向けた後に、手からナイフを離した。
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鎖月零(プロフ) - Flower*さん» flower!ありがとうございます!!短編の夢主は同じ夢主で書くのが普通だということを今の今まで知らなくて……全員バラバラにしてしまいました(笑)私も短編の方が書きやすくて軽くかけるので楽しかったです!続編頑張ります! (2018年2月26日 18時) (レス) id: e5c976073b (このIDを非表示/違反報告)
Flower*(プロフ) - 1完結(?)おめでとうございます!甘々で読んでてドキドキしてしまいました(*ノωノ) それぞれのお話の夢主ちゃんたちも個性豊かで面白し、何より短編なので読みやすいです。やっぱり零すごい……。続編の方も首を長くして待ってます! (2018年2月24日 0時) (レス) id: 4d95f4e8a2 (このIDを非表示/違反報告)
黛パフェ(プロフ) - 鎖月零さん» めっちゃ楽しみにしてます!!! (2018年2月18日 18時) (レス) id: d3f83fb575 (このIDを非表示/違反報告)
鎖月零(プロフ) - 黛パフェさん» うそぉ……本当に恥ずかしいです(笑)規制かかる系の甘々はあまり得意分野ではないのですが、楽しんでいただけると幸いです……!甘くなるように頑張ります (2018年2月18日 18時) (レス) id: a33d034fdf (このIDを非表示/違反報告)
黛パフェ(プロフ) - 鎖月零さん» 今でもたまに見たりしますよ!黄瀬くんの好きですー!規制とかあまり気にしないタイプなので別のアカウントで見に行きますねー! (2018年2月18日 1時) (レス) id: d3f83fb575 (このIDを非表示/違反報告)
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