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私は隣に数脚重ねてあった椅子を、取り出して隣に並べた









するとお兄さんは少し顔を上げて不思議そうにその椅子を見てから私を見た









「ごめんなさい…いきなり泣いてしまって」








お兄さんはきっと勘違いしてるんだろう







いつも可愛くて元気な翔が、傷だらけになって目を覚まさない






翔がこんな姿なのは見てられない









……違う







そういう訳で泣いてるんじゃない








「……嬉しくて…っ」









私が涙を拭いながらそう言うと、小さく"えっ"という声が聞こえた







静かな空間だから、少しの声でもはっきりと聞こえる









私は少し顔を上げてお兄さんの方を見ると、予想通り驚いた顔をしていた








「…誰に何の話を聞いたのかは分からないです」








でもお父さんとお母さんと、違う所。









「……お父さんもお母さんも、私が病院に着いた時にはもう冷たくなって




もう会えなくなっていた」









お兄さんは自分の膝の上でズボンを握りしめていた







「…でも、翔は生きてる…





…だから、それが嬉しくて」









お兄さんはきっと、




私には家族が弟しかいない上に、その弟を傷付けてしまった






そしてその上、命がどうなるのか分からない







だから私が酷く傷付いていると思っていたはず









お兄さんの顔を見ると、驚きながらも眉を下げて少しだけ目を潤ませていた








もちろん、相手を思いやるほど大丈夫なんて言える状況でもない








だけど私の中で一番生きているという事が嬉しくて。









眠る翔の手に触れると、いつものようにとても暖かい。







力が入ってなくて握り返してくれないにせよ、その暖かさがまた胸を締め付けた









私はお兄さんの手を取って、そのまま翔の手に当てた







するとお兄さんの目は少し大きくなった









「…ね?嬉しい…って感じるでしょ…?」








するとお兄さんの頬には涙が流れ、大きく頷くとそのまま下を向いたまま大きく泣き始めた









『…っはい…!』









翔の暖かさに、いちいち説明なんて要らない





そんな気がしてたけどやっぱりそうで、お兄さんも分かってくれたみたいで良かった








しばらく、二人して涙を流していた









.







『午後…僕の親がお見舞い…謝罪しに来ると…』







時々沈黙になったり時々会話をしたり…

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PUPU(プロフ) - は る くさん» 更新遅くて申し訳ないです(´;ω;`)そして嬉しいお言葉ありがとうございます! (2020年5月26日 21時) (レス) id: 1af456bb3b (このIDを非表示/違反報告)
は る く(プロフ) - ノンストップで読んじゃいました。。。続き楽しみにしてます!!! (2020年5月23日 16時) (レス) id: 20d1569ebb (このIDを非表示/違反報告)
PUPU(プロフ) - redstarm53さん» 少しでもそう感じてもらえてるなら良かったです!ありがとうございますm(_ _)m (2020年5月21日 10時) (レス) id: 1af456bb3b (このIDを非表示/違反報告)
redstarm53(プロフ) - むちゃくちゃドキドキして、すごく焦ったくて、めっちゃ青春って感じです!!!続きをいつも楽しみにしています。更新ありがとうございます! (2020年5月21日 0時) (レス) id: cfdf260033 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:PUPU | 作成日時:2020年5月5日 11時

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