光を求める少女の話 【文スト】【黒の時代】【太宰治】

第六十七話＿箱の中身 ページ30

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太宰「なぁ〜んだ、そんなこと……」


太宰はポケットから針金を取り出すと織田に「貸して」と云い金庫を貰う


そして耳に金庫を当てながら鍵穴に針金を入れ弄くるとカチャッと音が鳴った


太宰「開いた！」


織田「(器用な奴だ)」


A「………」


その箱が開くと織田は目を見開く。そこに合ったのは先程太宰が云っていた旧式の拳銃＿＿灰色の幽霊(グラオガイスト)だった


織田「おい、何故だ……？

お前さっき此の銃は徽章(エンブレム)だと云ったよな？連中が何者か示すための

其れを安吾が持っているってことは………！？」


太宰「此れだけでは何とも云えない

安吾がこの銃を連中から奪ったのかも知れないし

或いは連中が誰かを陥れる偽装証拠としたかったかも知れない」


織田「………お前の云う通りだ」


太宰「だけど織田作、一つ気付いたことを教えるよ

昨日酒場で飲んでいた時、安吾は取引の帰りだと云ったろ？

あれは多分、嘘だよ」


太宰は箱を閉めながらそう云った
その言葉に織田作は驚きAも手が少し動いた


太宰「安吾の鞄を見ただろう？

上から煙草、携帯、雨傘、写真機(カメラ)と戦利品の骨董時計が詰まっていた

携帯、雨傘は使用されて拭き布に巻かれていた

そして出張先の東京は雨だった」


織田「雨が振って傘は濡れていた。何の不都合がある？」


太宰「安吾は自前の車で取引現場に向かった筈だけど

ではあの傘は何時、使われたのだろう？

取引の前じゃない？傘は時計の上に置かれていたからね、そして後でもない」


織田「何故だ？」


太宰「あの傘の濡れ方は二、三分使われた感じじゃない

たっぷり三十分は雨に打たれてた筈だよ

其れだけ雨の中に居たにしては安吾の靴もズボンの裾も乾いていた

取引が八時で我々が会ったのが十時

取引の後、二時間では乾かくのに時間が足りない」


織田「着替えを持っていたのかも知れない」


太宰「酒場からの帰りに私達は安吾の車に便乗したが靴も着替えも無かったよ


私の予想では安吾は取引には行かず雨の中

誰かに会い三十分くらい会話をしてから残りの時間を潰して帰って来た

安吾の用な情報員はしばしば雨の降る路上を密会の場所に選ぶことがある

室内より密談に向いてる」


織田「安吾はポート・マフィアの秘密諜報員だ。誰にも明かせぬ密会の一つや二つあるだろ？」


太宰「ならば一言云えば云い。"云えない"と

そうすれば私も織田作もそれ以上は聞かない

………そうだろう？」


織田「(確かにその通りだ)」

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