3-46.ぶりっ子ちゃんの宣誓 ページ47
原稿は一文字残らず読みきったし、スライドもすべて見せ尽くしたし、もういい時間だ。
しかし、わたしたちは「以上です」と言わなかった。
物足りない。言い足りない。自分が大切にしたいものを見つけた瞬間、そう思った。このままじゃ気が済まなかった。昨晩、この漠然とした空白感を蘭ちゃんにFINEで明かし、少しだけ付け足したいとせがんだ。急な頼みな上に、具体的な内容も書いていない。けれど、数分も経たず蘭ちゃんの二つ返事がスマホを震わせたのだった。
ちら、と隣の彼女を見ると、その視線を迎え入れてくれた。わたしを心から信じているような、澄んだ目で。
「余談ですが――」
これから言うのは、ただのわたしの自己満足。でも、ぶりっ子の端くれとしてのひとつの義務。
「すでにご存知かもしれませんが、わたしはぶりっ子です。このテーマを選んだ理由は、もっと関心を深めて、自分のぶりっ子像をはっきりさせたかったからです。実際に調べてみたら、想像していた以上にぶりっ子への風当たりが強くて、正直驚きました。こんなに、嫌われるものなのかと」
原稿にない、自分の言葉で空白を埋めていく。
「……でも、『じゃあぶりっ子をやめよう』とは思いませんでした。このプレゼンを通じて気づけたことは、ぶりっ子を受け入れてくれる優しい人たちと、一周回って許せるふたりのぶりっ子に支えられて、わたしは今ここに立っているということです。だから、その恩返しのためにも、皆さんにとってのぶりっ子のイメージが少しでも良いものになるように――わたしは」
覚悟を胸に、ここに宣言する。
「わたしは、ぶりっ子を続けます！」
みんな、面食らった顔をわたしに向けている。臆することなく、ひとつずつそれをしっかりと見た。本気であることを、証明するように。
「――私は、そんな彼女の一助となれるように、微力ながらも後押ししていきます」
今度はわたしが面食らって、もう一度蘭ちゃんに首を向けた。横顔でも分かった。同じように、本気だった。
空白は埋まった。ふたりではめたジグソーパズルの最後のピースは、夕焼け色をしていた。それも、これから来る新しい季節に期待が膨らむような、少し騒がしいくらいの鮮やかさで。
「以上です」
声を揃えて言うと、たちまち拍手に包まれた。すべてを出しきった抜け殻のような体を労わるように、それがあたたかく染み込んでいった。
その後の授業の内容は、何も覚えていない。
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やま(プロフ) - 面白いです、笑っちゃいました。 (2021年9月19日 13時) (
レス) id: 0eb68c7075 (このIDを非表示/違反報告)
無気力に自信が有る人 - あ、真白と同一人物です！ (2021年7月25日 17時) (レス) id: 19b8beddf0 (このIDを非表示/違反報告)
無気力に自信が有る人 - 思わず笑っちゃいました！しかも、なんか余計にクラスの人に�猜僂陛朖瓩辰道廚錣譴修Δ覆海箸鬚錣兇錣供帖帖帖帖�この小説凄く面白いです！ (2021年7月25日 17時) (レス) id: 19b8beddf0 (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - 真白さん» ぶりっ子についてプレゼンする人なんてそうそういないですよね（苦笑） (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - Rukia (ゆっくりゆる)さん» ありがとうございます！！一人一人の登場人物をこんなに丁寧に見てくださって本当に嬉しいです！（いつか名前も覚えていただければ大変恐縮です！）りうむちゃんのことも好きになってもらえて嬉しいです、ぜひ推してあげてください！ (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆の字 | 作成日時：2019年12月7日 15時
