3-38.ぶりっ子ちゃんの薄暮 ページ39
「それは、もえたんも同じだよ♪ 蘭ちゃんがそばにいてくれるから、もえたんは今もこうしてもえもえ出来るの♡」
鞄の上に置いた蘭ちゃんの手を、そっと包み込んだ。同じ温もりを感じる。
そうか。わたしも、怖かったのだ。温もりは嘘をつけない。蘭ちゃんと同じように、明日を恐れていたのだ。
でも、それを悲観することはない。こうして温もりとともに共有しあえば、ほら、じんわりと溶けていく。これはひとりじゃ出来ないこと。蘭ちゃんがいてくれるから、出来ることなのだ。
「――明日、頑張ろうねっ♡」
小首を傾げてももえがお。そこには覚悟も秘めている。蘭ちゃんも微笑んで、それに応えてくれた。
しん、と静まる教室。ヒグラシはもう鳴いていない。一匹も。夏が終わった。終わってしまった、とは思わない。名残惜しさはあるが、今は次にやって来る季節に前向きになれる気がする。
ふと窓を見れば、秋気を帯びた茜色の美しさに目を奪われた。実のところ、教室で夕焼けを見たのはこれが初めてかもしれない。放課後の練習は空が赤くなる前に終わっていたし、それに――友人関係が希薄だったわたしは、授業が終わっても特に遊ぶ予定もなく、そのまま逃げるように家に帰っていたからだ。
「……夕焼けって、こんなに綺麗だったんだね」
小さく笑って、蘭ちゃんは呟いた。まったく同じことを考えていた。つられてわたしも笑った。
青春の色。ここでしか見られない茜色。蘭ちゃんがいてくれるから見える色。
今、真っ白な画用紙と色とりどりのクレヨンを渡され、何でも描いていいよと言われたら。
この色のクレヨンを握って、夕焼けを描くのだろう。
ふたりで。自由に。
「――あっ！」
急に蘭ちゃんが大きく声を上げた。驚いて隣を見ると、廊下にいた二つの影がさっと隠れ、姿を視認するより早く足音が遠のいていった。
急いで廊下に出てみたが、これといってらしきものは見当たらなかった。
「誰かいた、よね……」
「うん……」
「さっきから、気配を感じるなーって思ったら……」
「うん……」
半ば上の空で返事しながら、今起きた一瞬の出来事を頭の中で巻き戻した。そして、たった一つだけ、確かな特徴を拾い上げることが出来た。
――双葉のようなものが、見えたような。
けれど、あえて蘭ちゃんには言わなかった。
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やま(プロフ) - 面白いです、笑っちゃいました。 (2021年9月19日 13時) (
レス) id: 0eb68c7075 (このIDを非表示/違反報告)
無気力に自信が有る人 - あ、真白と同一人物です！ (2021年7月25日 17時) (レス) id: 19b8beddf0 (このIDを非表示/違反報告)
無気力に自信が有る人 - 思わず笑っちゃいました！しかも、なんか余計にクラスの人に�猜僂陛朖瓩辰道廚錣譴修Δ覆海箸鬚錣兇錣供帖帖帖帖�この小説凄く面白いです！ (2021年7月25日 17時) (レス) id: 19b8beddf0 (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - 真白さん» ぶりっ子についてプレゼンする人なんてそうそういないですよね（苦笑） (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - Rukia (ゆっくりゆる)さん» ありがとうございます！！一人一人の登場人物をこんなに丁寧に見てくださって本当に嬉しいです！（いつか名前も覚えていただければ大変恐縮です！）りうむちゃんのことも好きになってもらえて嬉しいです、ぜひ推してあげてください！ (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆の字 | 作成日時：2019年12月7日 15時
