よし、番外編へ行こう。と思った今日この頃。【文スト】 参。

シュレディンガー・アニヲタ様リクエスト ページ34

中也さんから「助けてくれ」という旨のメールが来た時点で中々に嫌な予感はしていたのだが、それが当たるとなるとやはり嫌な顔をせざるを得なかった。

何ですかこれ、と私は呟く。



「お？ おぉお〜！ 久しぶっ……うえ、おえ……」

『何ですかこれ』



見覚えのある金髪とゴーグルの男性──要するに梶井さん──が、私の方を見てへらへらとした笑いで手を振る。だが直後に胃がやられたのか、カウンターに突っ伏して口元を押さえ始めた。私は二度云った。

中也さんの方を責めるような目で見てみれば、パンッと両手を合わせて「いや、本当にすまねェ」と謝罪してきた。このあと急に用事が入ったのだが、見ての通り梶井さんと飲んでいた最中であのようなへべれけになっている彼を置いていくのは良心が咎めたらしい。


マフィアに良心もクソもと思ったが、まぁ確かにあんな状態の梶井さんを置いてはいけないだろう。



『ていうか、中也さんお酒飲んでるのに仕事行けるんですか？』

「大丈夫だ。何とかする」

『…………』



私は彼の黒帽子が前後逆になっているのを教えてあげようか迷った挙句、そのまま中也さんを見送った。今では敵になっている私に助けを求めてくること自体がいけないのだ、自業自得である。

つーかそもそも私お酒飲めないし。


吐き気が収まったらしく、梶井さんは赤ら顔で「神よ！ 科学よ！」とか叫んでいた。なんか鋼の錬金術師の一話を思い出しますな……。




『錬金できたらなぁ。梶井さんそういう異能力とか知りません？』

「そもそも質量保存の法則がいつ発表されたのか、そしていつそれが確定されたのかは知ってるかい！」

『知りません』

「シュレディンガーの猫は！」

『何となく』

「うわはははは！ ではこの僕が教えてあげおぼろろろ」

『おわぁあああ！？』



勢いよく光沢を放つスツールに足を乗せ、そのまま長話を始めようとした梶井さんを吐き気が止める。というかそのまま吐いた。

流石にこれ以上飲む気にはならなかったのか、すみませんすみませんと私が謝罪する隣で膝に手を突きながらブラックカードを出していた。目が点とはまさにこのことである。


取り敢えずそのあとは中也さんに手間賃を請求しておいた。アイス十個入りがひと箱送られて来た。こんなもので買収されると思っていたら大間違いである。




『アイスうまッ』

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