花火大会、いざ 参 ページ12
「お連れさんは居るのかい?」
『居るんですけど、逸れちゃいまして……この後花火を見る予定だったんですけど』
凪は苦笑いを浮かべた。
「花火を見るなら、多分向こうの河川敷に居るんじゃないか?」
『河川敷……何処っすかね』
「……案内するよ」
『あざーっす!』
何このおっさん、滅茶苦茶いい人じゃん。凪はおっさん、否おじさんの評価を上方修正した。
「取り敢えず立とうか、ほら」
『うう、何から何まで……すんません』
おじさんが差し伸べてくれた手を、凪は掴んだ。
違った。
「……凪、何してんの」
乱歩だった。凪が手を掴もうとして伸ばした手を、乱歩が掴んでいた。
「……お連れさんかい?」
『ああはい、そうです……』
乱歩は無理矢理に凪を立たせた。
『あっ、ありがとう御座いました!』
「……」
凪は乱歩に連れられつつも、おじさんにお礼を云った。何故かおじさんは表情の読めない顔で佇んでいた。
乱歩が何度か角を曲がると、すぐに人通りの多い場所に出た。
『ありがとう御座いました、ちょっと迷子になっちゃって……』
「あの男」
乱歩は凪の言葉を遮って云った。
「最近探偵社を付け回してる」
『……え?』
「一、二週間前に来た依頼で探偵社が潰した密輸業者だ。多分凪の事も調べられてるよ、戦闘能力皆無ないいカモって」
唖然。凪はただただ顎を落として乱歩の話を聞いていた。最後に少しディスられたのは気の所為だろう。
乱歩は凪の事を翡翠の目で見つめ、云った。
「……もうちょっと、人を疑う事とかを知った方がいい。凪の長所は其処だけど、短所も其処だよ」
『……すみ、ません』
乱歩は気落ちした凪を暫く見つめた。だが、不意に何時もと同じ調子で云った。
「まぁ、凪がどんなに頑張ってもこの名探偵の僕には勝てないけどな!ほら、早く花火を見に行くぞ!」
『……はい、了解です!』
凪は判った。今のは乱歩が自分を心配してくれたのだと。自然と顔が綻ぶ。
乱歩は少し視線を彷徨わせると、今まで掴んでいた凪の手を一旦放して、指を絡めた。所謂恋人繋ぎだ。
凪が不思議そうに乱歩を見ると、乱歩は凪の方を振り向かずに云った。
「また凪が迷子にならないようにだ。他に理由なんてないからな」
『──ありがとう御座います?』
「疑問形じゃない」
ドドン、と花火が打ちあがる。
一つの光が静かに横浜の街を照らし、静かに消えて行った。
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とあるアニメーター - マジですか!!!ありがとうございます!お願いします! (2020年1月21日 21時) (レス) id: 6c92e05c62 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - とあるアニメーターさん» へえーいいですねえ!やらせて頂きますとも、何かかなり滅茶苦茶な展開になりそうですが……(笑)。 (2020年1月21日 18時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
とあるアニメーター - そうですか!良かったです!リクエストで、そうだ、番外編作っちゃおう!と思った今日この頃の第3段を記念して…。みたいな感じで、今日この頃シリーズで出てきた文ストキャラ達をたくさん出してほしいです!こちらも長めになって良いので、よろしければお願いします! (2020年1月21日 18時) (レス) id: 6c92e05c62 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - とあるアニメーターさん» ええ勿論!ちょっと遅くなるかもしれませんが番外編もとうとう三!……ひええマジかあ。 (2020年1月21日 17時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
とあるアニメーター - この番外編、続編行きますか? 続編作って頂けたら、またリクエストしたいです。 (2020年1月20日 21時) (レス) id: 6c92e05c62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白夜の世界 | 作成日時:2019年7月6日 21時