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「アルベド!」
「やぁ、Aじゃないか。こんな時間に訪ねてくるなんて珍しいね、どうかした?」
あぁ、好きだ。開幕一番、名前を呼ばれて話しかけられるだけで幸せいっぱいになる。きっとこんな気持ちになる人他に居ないだろうと思うくらいには、アルベドのことが好きで好きでたまらない。
私は先程買った薔薇を後ろ手で隠しながら、少しずつ近づく。
「今日はね、アルベドにプレゼントがあって」
「今日? ……なにかの記念日だったかな。ボクの記憶では、何も無いはずなんだけど」
「何も無くていいよ。これから作るんだから!」
私はそう言って、薔薇をアルベドにくっつけた。
アルベドはすこし驚いた表情をして、それから目を丸くした。
「……どうしたんだい、これ」
「アルベドに笑顔になってほしくて。今までなにやってもダメだったから、これならどうかなって」
「……あぁ、ずっと。そういう事だったのか……」
私の言葉に、アルベドは納得したような表情を見せた。それから──私に初めて見せる表情をして、明るい声色で言った。
「ありがとう。世界一……ううん、今まで生きてきた中で一番嬉しいプレゼントだよ」
キラキラと輝く翡翠の瞳を細くして、頬はすこし赤らんで、口角を上げている。首元にはもちろん、ひし形のマーク。
目の前のアルベドは、間違いなく私が愛している彼で、言葉も、声色も、雰囲気も……その全てが、私が愛した彼で間違いない。
あぁ、そうだ。私が見たかったのは、彼のこの表情だ。
「よかった、笑顔になってくれて! これでダメならどうしようかと思ったよ〜!」
「大好きな人に薔薇をもらって喜ばない人はいないだろう。ボクだってそうだ。……たくさんの意味を、込めてくれたんだね」
「伝わった?」
「もちろん。考えてくれてありがとう」
「えへへ、どういたしまして!」
そうして、アルベドは私のことをそっと抱きしめた。もちろん抱きしめ返す。
私の背中では、ゆらゆらとプレゼントした薔薇が揺れている。この薔薇をきっかけに、アルベドがもっと笑ってくれたらいいな、なんて。
……
…………
………………
⑴
答:11本の黒い薔薇
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