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雨が159粒。 ページ25

扉が開いたと思ったら、現れたのは中也さんだった。




そして彼は、遅いから来た、と云った。





「あ、済みません。敦君と話し込んじゃって。」





帰ろっか、と敦君を見た。敦君も、そうだね、と頷いた。






「中也さんも戻りましょう。態々来て頂いて有り難う御座いました。」


「気にすんな。」






何か中也さん変……?



何時も通りの筈なのに、違うと云うか……素っ気無い感じ?




あー若しかして敦君と居たから?




浮気だとでも思ったのだろうか?






「敦君、ちょっと先に帰っててくれない?」


「?判った。」






敦君が保健室から出たのを確かめると、中也さん、と呼び掛けた。




彼は、何で先に帰したんだよ、と私に尋ねた。






「浮気なんてしてませんよ。私には中也さんだけですから。って、お伝えしようと思って。」


「………正直焦った。名前はンな事しねェって判ってンのに、若しかしたらって。…悪ィ。俺、独占欲強くて嫉妬深いんだよ。」






そう云う彼は何時も以上に弱々しく見えた。



手を離せば何処かに飛んで行きそうで、儚かそうで。



私は何処にも行かないで欲しいという衝動に駆られ、何処かに行ってしまいそうな彼を抱き締めた。






「名前?」


「貴方が何処かに行ってしまいそうな気がして。……何時も怖いんです。貴方は私を何時でも手放せるから、私から離れるなんて容易い事だから、だから、」


「離れて行かねェよ。簡単に手放すなんてなァ、俺にはもう無理なんだよ。」


「………なら、善かった。……後、中也さんが独占欲強くて嫉妬深いなんて知ってますよ。」


「カッコ悪ィな。」


「中也さんは何時でも恰好いいですよ。私を助けてくれた貴方は誰よりも恰好いいです。」






そんな褒められる様な事はしてねェ、という呟きが耳に入った。



私はそれに苦笑を浮かべた。そんな事無いのに、と。






「俺は未だお前を救えてねェ。」


「そんな事無いって。私はあの時、貴方が彼処に連れて行ってくれたから、今、斯うして居られるの。ありがとう、中也。」






ン、と短く答えると私を強く、でも優しく抱き締めた。



可愛いな、と思ったのは云わないで於く。




云ったら………うん、殺されかねない。

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ベベンべエエェェ - 何か自分が恥ずかしいデス… (2021年9月14日 21時) (レス) id: ce3d8a7ebf (このIDを非表示/違反報告)
ベベンべエエェェ - 私誰かが憎しんでる顔とか、絶望してる顔大好きなんですよね…何時の間にかドエスになってたり… (2021年9月14日 21時) (レス) id: ce3d8a7ebf (このIDを非表示/違反報告)
永眠(プロフ) - あの、すみません。この次の小説にパスワードが着いていて、書かれてある通りに打ったり、コメントでみたパスワードを書いたんですけど、開けなくて。どうしたらいいですか? (2020年7月8日 13時) (レス) id: b1f570929b (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - 零魔さん» コメントありがとう!!そう言って頂けて、嬉しい限りです!ありがとうございます! (2018年3月16日 9時) (レス) id: fcb4695207 (このIDを非表示/違反報告)
零魔 - 凄い! (2018年3月15日 22時) (レス) id: 8e0c5fded6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:バンビ | 作成日時:2016年12月29日 14時

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