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清涼感のある木の香りが鼻腔をくすぐる。
あの当時、街にはほとんど出なかったから、風景には見覚えがない、それでも香りだけは懐かしい。
朝市をくぐり抜け、目的地の協会へ向かう。
協会といってもあの日に私が焼いたことで、そこは既に跡地となっている。あそこには暮らした建物も、養父の死体も、義兄弟の死体も残っていないだろう。
昨日調べたところ、地元新聞では、不運な火災として纏められてあり、元より身寄りのない者ばかりであったので、遺体は同系列の協会で共同埋葬されたとあった。
一部のメディアでは、自然事故ではあり得ない程に証拠がなく、また登録されていた住民の数と、遺骨の数が不一致であり、宗教絡みの事件だとも書かれていた。だが、生存者はおらず、めぼしい証拠も、容疑者も見つからなかったため、捜査は早々に打ち切られほとんどが憶測で書かれたものとなっており、自分の記憶の照合には役には立たなかった。
失っていない記憶なのに、思い出そうとしても曖昧な部分が多過ぎる、だから現地を訪れた。
おそらく、当時の私はストレスで記憶を曖昧に処理してしまったのだろう。
正直今の私にはそこまでの恐怖はない。不快感や、嫌悪感こそあれど、家族や友に受け入れられた事であの日々に対する恐怖はほとんど失われている。
人の波をくぐり抜け、もうそろそろ目的地が見えてくるという辺りで、何の前触れも気配もなく、背中に焼けた鉄を押し付けられたような痛みが走った。
脳に直接響くような痛みに、思わず呻き声を漏らす。
周囲を見渡し状況を確認すれば、視界の少し先にこちらに背を向けて走る影があった。
小柄な影は、こちらの視界から外れようとあえて人混みを掻い潜り、こちらから逃げようとしていた。
認識と同時に駆け出す、あっと言う間に追い付き、背後から手刀を浴びせる。
崩れる肉体を、右腕で支え持ち上げれば、その肉体の軽さと敵の弱さに驚いた。あり得ない、自分に気配を悟られずに尾行を続け、挙句に攻撃を仕掛けるなど、相当な使い手でないと不可能だ。
なのにこの者は、一般人と何ら変わらぬ弱さだ。
頭が割れるように痛む。
考えなくてはならない事は山ほどあるが、周囲が異変に気づく前に、人のいない場所に移動しようと、足を動かす。
一歩、一歩と足を進める度に、刺された傷がどんどんと広がっていくような錯覚が訪れる。
悪寒と吐き気が溢れ、立っているのも苦痛であったが、何とか市場を抜けて教会近くの林にたどり着いた。
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カンナ(プロフ) - お返事ありがとうございます！嬉しいです、、応援してます！これからも楽しみに読んでいきます！ (3月28日 3時) (
レス) id: fc7530e511 (このIDを非表示/違反報告)
あやこ(プロフ) - カンナさん» カンナさん、コメントありがとうございます。 お待たせして申し訳ありません。part2やっと終わりました。part3は少しでも更新頻度を上げれるよう頑張りますので、是非最後までよろしくお願いします。 (3月26日 0時) (レス) id: 7bf5456e4c (このIDを非表示/違反報告)
カンナ(プロフ) - 素晴らしすぎる作品に出会えました、、、この出会いに感謝しかないです．お忙しいとは思いますが、無理ない程度に更新していただけると全わたしが歓喜します。応援してます！ (3月18日 10時) (レス) @page46 id: fc7530e511 (このIDを非表示/違反報告)
あやこ(プロフ) - 天音さん» 天音さん、コメントありがとうございます。お待たせして申し訳ありません、ストーリーはまだまだ続きますので、是非最後までよろしくお願いします。 (3月9日 21時) (レス) @page46 id: 172db88909 (このIDを非表示/違反報告)
天音 - とても素晴らしい作品に出会えたことに感動してコメントを残したくなりました。読んでいて時間を忘れるほどに面白かったです。素敵な作品をありがとうございました。 (8月28日 20時) (レス) id: 2158ec844c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あやこ | 作成日時：2018年11月13日 23時
