過去69 ページ22
翌朝、まだ日が昇る前にAは家を出ようとしていた。
足音を殺してベッドから下りる。家族には予め朝一で家を出ると伝えてある。
隣のキルアはまだ寝ているようですうすうと寝息を立てていた。キルアの頭に手を伸ばし、自分と同じ色の髪を軽く撫でる。昨晩キルアが部屋に帰って来た時に明日帰ると伝えると、泣かれてしまった。またすぐに会えると伝え、次帰る時はお土産を沢山買ってくると約束をしたが、その涙はキルアが寝付くまで止まらなかった。
キルアは、泣き喚いたりはしなかった。ただ、黙って透明な涙を流していた。
それがかえって私の胸を苦しくさせた。
私は我が儘だ。
家族を置いて、自分の望みを押し通そうとしている。
透明な涙にその事を再認識させられた。
おそらく起きているであろう父に小声で「いってきます」と伝え、部屋を出る。
廊下に出ると、まだ朝早いのもあり息が白くなった。
「行くの？」
石畳の廊下を歩き、10メートル先に扉が見えた時。
背後からイルミの声が聞こえた。
振り返ると、闇に溶け込んだイルミと視線が交わる。
「うん」
「どうしても？」
「どうしても」
闇と同化しているイルミの表情は分からない。
「……そう」
無音で、イルミが近付いてきた。
私の目の前に立ち、漆黒の瞳でこちらをジッと見つめる。
背丈が変わったと感じた。昔は同じぐらいの背丈だったが、今は10センチ以上差がある。
あと、声も変わった。声変わりをしたのだろう、男性にしては高めだが私の記憶の声より低い。
白く角ばった手が頭に向かってくる。私を撫でようとしているのだと思った。昔のように、今朝私がキルアにしたように。
しかし、何かが違うと本能が発した。同時に昨晩の父の発言が脳をよぎる。反射でイルミの手を見る、その指を丸めた手の形で、全てを悟った。
イルミの行動全てがやけにスローに見えた。
その白い指が私に触れる前に、私は念を発動した。
ｼﾞｭ
鈍い音を立てて、イルミの手の中にあった針は熔けた。
当たり前だが、イルミも成長している、変化している。私達は双子だ。双子だが別々の人間だ。
イルミの行動に憎しみも怒りも悲しみも感じない。ただもう、私達が交わることはないのだろうなと感じた。
「イルミ、いってくるね」
立ち尽くすイルミに背を向けて、扉を開ける。外の空気は冷たいが、澄みわたっていた。
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カンナ(プロフ) - お返事ありがとうございます！嬉しいです、、応援してます！これからも楽しみに読んでいきます！ (3月28日 3時) (
レス) id: fc7530e511 (このIDを非表示/違反報告)
あやこ(プロフ) - カンナさん» カンナさん、コメントありがとうございます。 お待たせして申し訳ありません。part2やっと終わりました。part3は少しでも更新頻度を上げれるよう頑張りますので、是非最後までよろしくお願いします。 (3月26日 0時) (レス) id: 7bf5456e4c (このIDを非表示/違反報告)
カンナ(プロフ) - 素晴らしすぎる作品に出会えました、、、この出会いに感謝しかないです．お忙しいとは思いますが、無理ない程度に更新していただけると全わたしが歓喜します。応援してます！ (3月18日 10時) (レス) @page46 id: fc7530e511 (このIDを非表示/違反報告)
あやこ(プロフ) - 天音さん» 天音さん、コメントありがとうございます。お待たせして申し訳ありません、ストーリーはまだまだ続きますので、是非最後までよろしくお願いします。 (3月9日 21時) (レス) @page46 id: 172db88909 (このIDを非表示/違反報告)
天音 - とても素晴らしい作品に出会えたことに感動してコメントを残したくなりました。読んでいて時間を忘れるほどに面白かったです。素敵な作品をありがとうございました。 (8月28日 20時) (レス) id: 2158ec844c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あやこ | 作成日時：2018年11月13日 23時
