第26話「お気に入り」太宰治 ページ27
マフィアの拠点に行っていたらしいいろはは、全速力で走ってきたらしく息を切らしながら社へと入って来た。
「太宰さん!敦くん達無事ですか!?」
「無事だ。安心し給え、いろは。」
「良かった……。じゃあ、与謝野姉さまに?」
「嗚呼、谷崎くんとナオミちゃんは、ね。」
「……敦くんは?」
不安そうにそう云ういろはに、私は顔の表情を暗くし__
「暁で遊ぶのをやめろ、太宰。……大丈夫だ、暁。そもそも、治療の必要が無かった。」
国木田君に台無しにされたのだった。
「ちぇー……。まぁ、そう云う事だ、いろは。」
「……そうですか、そう云う事なら良かったです。」
ほっとした様子のいろはに、国木田君は奥の扉を指さす。
「……小僧は奥の部屋で休んでる筈だ。」
「有難う御座います、国木田さん。」
私は国木田君の言葉に、微笑んで礼を云い、少し速足でいろはは敦君の居る部屋に向かうのを眺めていた。
「……にしても、意外だな。」
「うん?何が?」
「否……暁は探偵社の皆と仲は良いが、太宰以外を特別気に入る事なんて無かっただろう。」
そういう性格なのだと思っていた、といろはの後ろ姿を見ながらそう云う国木田君に、私はそうでもない、と否定する。
「確かに、いろはが気に入るのは久しぶりだが……。いろはが気に入るのは一定の強さを持っているか、その内手に入れる人物が多い。私もちゃんとは知らないが……過去が、関係しているのだろうね。だから、本能的に“強い人物”を好む。……失いにくい事が理由だろうね。」
私は目を伏せながら、そう答えて見せた。
「過去については……本人から聞くといい。無論、云ってくれるかどうかは別として。」
教えてくれないだろうな、国木田君には。
言葉とは裏腹に、私はそんなことを考えていた。
あんなに慕ってくれている私でさえ、“孤児になる前、大切な人が死んだ”というトラウマがある、という事を努力してやっと聞き出したぐらいなのだ。
敬い慕ってくれている私にでさえ……大抵の我儘は聞き入れてくれるいろはが、誰を失ったのか、何故失ったのか、そういった詳しいことは教えてくれなかったのだから。
……現時点じゃ、これ以上の事は誰も引き出せない。
私達といろはの間は、近いけれど高い壁が有る。
それを、登れそう……否、壊せそうなのは敦くん位だろう。
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ラッキーアイテム
革ベルト
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業猫(プロフ) - ルナさん» コメントありがとうございます……修正しますので少々お待ちください;; (2020年6月4日 23時) (レス) id: 3f4322bc19 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ(プロフ) - 名字を設定しても、(名字)のままなんですけど.... (2020年6月4日 23時) (レス) id: 63ee3bf45b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年5月20日 18時