#6 ページ7
太宰side
A「やぁやぁおかえり、太宰。ご飯にする?お風呂にする?それとも…」
借家としている部屋の扉を開ければ、待ち伏せていたAが早々に捲し立てる
部屋の主たる太宰は、扉を開けた姿勢のまま一瞬動けなくなっていた
しかし、頭の回転は速い方だと自負している
すぐに正気を取り戻し扉を閉めた
そして軽蔑するような視線を目の前で笑みを浮かべる変人に突き刺さるように向ける
否、実際に刺さってしまえばいい
太宰「なにしてるの」
A「何って太宰のお迎え。嬉しいでしょ?」
悪意はないのだ。この変人には。
わざとかもしれないが、悪意はないのだ
まともに相手するだけ徒労に終わることを心得ている
Aの言葉を聞かなかったことにして別の話に移行することにした
太宰「因みに、最後になにを言おうとしたの?」
ご飯にするか、お風呂にするか
実に浪漫溢れる質問であるが、あのAがまともな事を言うわけがない
どうせAを縊り殺すかだの殴るだの言われるに違いない
半ば呆れた視線を向けながら返答を待つが、Aは「否、忘れてくれ」と言っただけであった
可笑しい
Aならここでまた気色悪いお願いをしてくるのに
変なものでも食したのだろうか…
A「先にご飯でいい?」
太宰「…構わないよ。にしても、料理なんて出来たのだね」
A「それは私の技量の話?それともこの家の食材の少なさの話?」
太宰「両方だよ」
他愛もない話をしながら部屋に入れば確かにいい香りが鼻腔を擽った
咖喱だ
A「予想通り私に大した料理の腕はない。咖喱が精一杯さ」
そう言いながら盛り付けた咖喱を机に並べるA
その横顔がどこか愁いを帯びていたのはきっと彼を思い出していたのだろう…
織田作とAは深い仲では無かったが、人との交流が少なかったAにとってはかけがえのない存在であったはずだ
沈黙のままスプーンに載せた咖喱を口へと運んだ
太宰「…一寸。なんのつもり」
何故口に含むまで気づかなかったのか
否、Aが見た目で分かるような生ぬるいことをする訳がない
満面の笑みで水を差し出してきたAに一瞥くれてやり、素直にそれを受け取る
流石に水に細工をする人間ではないことは分かっている
悲鳴を上げる口内に水を流し込んだ
A「美味しかった?激辛咖喱」
絶対に許さない。
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