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冷やしたタオルを手にAがいる寝室へと足を踏み入れる
首領によって眠らされたAは、Aがセーフハウスとして使っている一室に運ばれた
それが3日程前のことだ
目が覚めて、今日に至るまでAは笑い、泣いていた
時々底知れぬ無力感を感じたように脱力する事があったが、まともな会話ができる訳では無い
生活なんてもっと出来ないだろうと感じ、有給をもぎ取り居座っていた
A「ちゅうや……私…」
中也「…目ぇ覚めたか」
A「……うん」
中也「これで目冷やせ」
そう言って冷やしたタオルを手渡す
Aはソレを受け取ると仰向けになり、目の上にタオルを乗せた
A「…たくさん笑うと目が痛くなるのね」
自分が泣いていたとは気づいていないのか
初めて知った。とAが呟いた
A「初めてなんだ…親しい間柄の人が出来たのも…その人たちが去ってしまったのも…」
そう言うAは片方の手の甲をおでこにあてた
タオルで目元は見えないが、きっと遠くを見ているのだろう
何も言わずにベット横の椅子に腰かけると、Aは再び口を開いた
A「安吾も…もう居ないのだろう…」
質問ではなかった
まだ耳にしていないだろうに、Aはすでに答えを知っているようだ
A「覚悟はしてた…でもこんなに早く、一気に居なくなってしまうなんて思わなかったんだ」
覚悟が足りなかったのだ、そう言うAは静かに涙を流した
マフィアをしている以上、仲間が死ぬということは身近なことだ
Aもそのことは心得ている
だけど、出奔するということに対する覚悟はしていないのだろう
A「黒服から数日の間に外であったことを聞いた時、心臓がわしづかみにされた気分だったんだ。呼吸がうまくできなくなって、思考も回らなくなって…苦しくて…気づいたら笑ってた」
中也「A」
A「中也は…いなくならないでね。私をあんな気持ちにさせないでね」
中也「…嗚呼。俺は死ぬ気も足抜けする気もねぇよ」
A「私より早く死ぬなよ。中也。約束だ」
―――不幸にも約束は果たされた
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