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#-3 ページ33

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冷やしたタオルを手にAがいる寝室へと足を踏み入れる

首領によって眠らされたAは、Aがセーフハウスとして使っている一室に運ばれた

それが3日程前のことだ


目が覚めて、今日に至るまでAは笑い、泣いていた

時々底知れぬ無力感を感じたように脱力する事があったが、まともな会話ができる訳では無い

生活なんてもっと出来ないだろうと感じ、有給をもぎ取り居座っていた




A「ちゅうや……私…」


中也「…目ぇ覚めたか」


A「……うん」


中也「これで目冷やせ」




そう言って冷やしたタオルを手渡す

Aはソレを受け取ると仰向けになり、目の上にタオルを乗せた





A「…たくさん笑うと目が痛くなるのね」




自分が泣いていたとは気づいていないのか

初めて知った。とAが呟いた




A「初めてなんだ…親しい間柄の人が出来たのも…その人たちが去ってしまったのも…」



そう言うAは片方の手の甲をおでこにあてた

タオルで目元は見えないが、きっと遠くを見ているのだろう

何も言わずにベット横の椅子に腰かけると、Aは再び口を開いた




A「安吾も…もう居ないのだろう…」




質問ではなかった

まだ耳にしていないだろうに、Aはすでに答えを知っているようだ




A「覚悟はしてた…でもこんなに早く、一気に居なくなってしまうなんて思わなかったんだ」



覚悟が足りなかったのだ、そう言うAは静かに涙を流した


マフィアをしている以上、仲間が死ぬということは身近なことだ

Aもそのことは心得ている

だけど、出奔するということに対する覚悟はしていないのだろう




A「黒服から数日の間に外であったことを聞いた時、心臓がわしづかみにされた気分だったんだ。呼吸がうまくできなくなって、思考も回らなくなって…苦しくて…気づいたら笑ってた」


中也「A」


A「中也は…いなくならないでね。私をあんな気持ちにさせないでね」


中也「…嗚呼。俺は死ぬ気も足抜けする気もねぇよ」


A「私より早く死ぬなよ。中也。約束だ」





―――不幸にも約束は果たされた

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作者名:エバ。 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年5月16日 12時

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