#-4 ページ32
ーーーー太宰が出奔した
その事実を知った俺は、何よりも先ず最高級の葡萄酒をあけた
それだけ俺にとっては青天の霹靂が如く幸運な事であった
Aは仕事が積み重なったらしく、ここしばらく会えていない
太宰のことを知っているのかもわからない
織田作之助とも浅からぬ関係であると耳にしたが、殉職した事を知っているのだろうか
なんとなく、知っていようがAは変わらない気がしていた
彼奴の中で“死”とは最上級の贈り物だ
Aは殺しを厭わない
Aは死を与えて微笑む
Aは死体に羨望の眼差しを送る
そういう奴だ
太宰のことはともかく、織田作之助のことを知ればAは祈りでも捧げるんじゃないかって思ってた
ーーーAの仕事が片付いたと姐さんに言われた
いつもなら姐さんとAがお茶をしてるのを見てそれを知るのだが、今回は違った
どこか思い詰めた表情の姐さんに送り出され、尋問室へと向かう
部屋の前には1人の黒服が未練でもあるかのように部屋の前を行き来していた
だけど、俺の顔を見るなりどこか安心したように去っていた
首を傾げながらも扉を開くと、聞こえてきたのは大きな笑い声だ
Aが声を上げて笑うなんて珍しい
そんなことを思っていたが、Aを前にして俺は文字通り固まった
呼吸も思考も時間さえ止まったように思えた
泣いているのだ
Aが
大声をあげて笑うAが、大粒の涙を流し泣いているのだ
初めて見るAの取り乱した姿に、思わず俺も気が動転する
座り込むAの肩を揺すり、何度も何度も名前を呼んだ
だけどAからの返事はない
ずっと壊れた玩具みたいに笑いながら泣いている
中也「A!!!」
A「あ、はは…ちゅ、や。はは、ちゅーや、あはは…だ、ざいが…ふふ、ふふふ…おだ、さくが…アハハ」
まともな説明も出来ないまま、Aは再び声をはりあげて笑う
俺が困惑してるのと同じように、Aもどうしたら良いか分からないように見えた
結局、俺は何も出来ずに、姐さんに連れられた首領によってAは眠らされた
ーーー有島Aとは、こんなにも脆い人物であると知った出来事だった
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