【太宰治】今はただ生きたい。【文スト】 (ページ21)

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#20 ページ21

太宰side

Aを見て歓喜の涙を浮かべた男

自害防止でかませていた布をとると、男がまず初めに放った言葉は神への祝福の言葉だった

万人が信仰する神にではない

この男の目に映っているのはAという変人だ

男がAを見る目は、まるで主に遭遇した狂信者のようだ

中也「Aの手を送り付けてきたのは此奴か…」

太宰「でも殺したのは別の人間だ…」

Aを神と見紛う人間がめった刺しになんてできるわけがない

と、なると犯人は別にいる…

「あぁ…あぁ！なんという至極の時！生まれたところに戻ってこれただけでなく！親愛なる主に拝謁できるなんて…！」

A「……なんか言ってるよ、中也」

中也「阿保。手前だよ。…此奴に何したんだよ」

A「何っていつもと同じよ。情報を吐かせて、質問をして選択させた。生きたいって言われたから逃がした」

「誠実でしょ？」と笑うA

逃がした相手が殺されていることを知っているだろうに…

一体どんな心境なのだろうか

A「ねぇ、私を殺したのはあなた？」

目を離したすきにAは、男の正面まで移動しそう問うた

男はというと神とあがめる人物が傍に来たことにより、これでもかと歓喜の声をあげた

よくもまぁAは近寄る気になったものだ

早いとこ離れて欲しい…

どうやら男の話では、Aを殺したのはやはり別の人物だという

男は不届きを働いたその人物を粛清したのは自分だ。と胸を張ってAに主張した

中也「手を切り落とした理由は？」

「え？書いた通りですよ。解き放たれし神に別れを。神に肉体など不要でしょう」

中也「わざわざ切り落とす意味があったのかって言ってンだよ」

「あぁ餞別です。曲がりなりにも今まで神が属していたのですから、お別れくらいはさせてあげようと」

中也「右手一本で葬式あげろってか」

「えぇ。私だって辛かったんですよ？神の柵となっていた肉体とはいえ、傷をつけるのは…」

中也「手前っ…！！」

一気に沸点のあがった中也が男に掴みかかろうとした時、Aが中也の行く手を阻んだ

A「そう…それじゃあお礼をしないと…。太宰、もう用はないよね」

太宰「…あぁ、ない。探し物の場所も検討がついた」

A「流石ね。ねぇ、私のことを神と見紛うのなら、その命捧げられるよね？」

「えぇ！えぇ！勿論ですとも！！あぁなんという至福！！」

A「それじゃあ…最高の祝福をあげる」