episode41 ページ4
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あぁ、もう、本当に。
怖がったら絶対に素になるだろうから、こんなの、危険な橋過ぎる。
逃げたい。家に宇宙人が来たので接客しなきゃとか、もうなんでもいいから何か言って逃げたい。
「い……」
「ふたばちゃん」
「あっはい」
逃げる言い訳を遮るかのように、名前を呼ばれた。
早川の笑顔は読めない。だから俺はこいつが少し、怖い。
「次、俺らの番だね。逃がさないよ?」
「はああ……」
強く握られた手、聴こえる悲鳴、向けられた笑顔……色々なことが俺の脳内を巡る。
ああ、もう、逃げられない。
係員のお姉さんに安全バーを下ろされ、がっしりと握る。片手は早川に繋がれたままだ。
「うう……っ」
うめき声が聴こえる。これは俺の声だ。ギギギと急な坂を登りながら、早川は俺に言った。
「怖かったら握ってていいよ」
返事をする余裕もないので、ぎゅっとつむっていた目を開けて早川に笑いかけようとした、その瞬間。
信じられないスピードと角度の急降下の中、早川優、こいつはどこまでも俺の敵だと思った。
「いやああああああああああああああ!」
「ひゃっふー!」
隣から聴こえた楽しげな声。それを掻き消すほどの絶叫、まるで断末魔のようだ。
誰だ、こんなに大声で叫んでいるのは。俺だ。
早川許すまじ、そう思いながらジェットコースターを降りたとき、ふらふらになった俺を支えたのもまた早川。
いい奴……なわけないから、いい奴のふりをしたクソ野郎だ。というか、早川はクソ野郎だ。
ちなみにこの後お化け屋敷に連れていかれた。俺は幽霊は信じない質なので、全く怖くなかったが、早川復讐なんちゃら大作戦のために怖がっておいた。
きゃあこわぁい! と叫んだ俺の声を思い出す。
何をやっているんだ俺は……。
「早川くんコーヒーカップ!」
「乗りたいの?」
「うん!」
きらきらおめめ、というのが効果的だとネットには書いてあったが……きらきらおめめとは。と検索したくなるようなアバウトさだった。
世の女性はこんなアバウトな記述で何を得ているんだ。
何が「きらきらした目で見つめてみましょう!」だ。そのきらきらした目が何か知りたいんだっつーの。
コーヒーカップでぐるぐるしていれば少しは疲れがとれるかもしれない……と、ほどよい風に優雅な気分になっていた。
ふう、随分と気が楽になった。これで後半戦も頑張れる。
イノセントランドデート、後半戦。
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綾音日和。@たこむし(プロフ) - 腐った林檎さん» ありがとうございます!なかなか更新できませんが、コメントとても励みになります! (2017年6月23日 18時) (レス) id: 88af71ac7b (このIDを非表示/違反報告)
腐った林檎 - 更新頑張ってください!このシリーズ大好きです♪ (2017年6月23日 17時) (レス) id: ad9b3355a7 (このIDを非表示/違反報告)
綾音日和。@たこむし(プロフ) - 抹雨喇らいとさん» ありがとうございます!気づくのが遅くなってすみません、更新頑張ります! (2017年5月15日 17時) (レス) id: 1e9658af6f (このIDを非表示/違反報告)
抹雨喇らいと - 引っ越すんですか!いろいろと大変かと思いますが更新ファイトです!応援してます(*´∀`)♪ (2017年5月8日 21時) (レス) id: f0fdb2d6f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たこむし | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/aromalight2/
作成日時:2017年4月19日 23時