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「え……?」
紛らわしい?何が?
呆けた私に、隊長は苛立たしげに「だから」と続ける。
「俺のこと何とも思ってねェくせに、そんな事聞いてくんじゃねェっつってんでィ」
「……は?」
意味不明な怒りをまた向けられて驚き、数秒かけてその言葉を理解する。
――何、それ。
今度は私も腹の底からぐるぐると怒りがこみ上げてきた。
仲直りしたいと思っていた気持ちを踏みにじられた気がして。
「何とも、って……。何ですか、それ。
……本気で言ってんですか?」
怒りで震えた私の声なんて気にもならないのか、隊長は変わらず私を睨み付ける。
「じゃあどう思ってるって言うんでィ。どうせまともな事思ってねェんだろィ」
「なっ……!か、勝手に決めつけないで下さいよ!!私がどれだけ貴方と仲直りしたいと思ってるか分かって言ってんですか!?」
「寝言言ってんじゃねェよ!!」
「ッ!?」
私と同じくらいか、それ以上の声量で怒鳴り返され一瞬体が震える。
隊長の表情は怒りと、それから何か――悲しそうな。そんな感情で満ちている気がした。
「……そもそも、仲直り出来るような間柄でもねェじゃねェかィ。
――そんな分かりやすく距離取ってる奴と、仲直りもクソもあるかよ」
打って変わって低く抑えられた声で、吐き捨てるかのようなその返しに、頭を殴られたような衝撃を受ける。
直後、ぶちんと頭の中で何かが切れた。
「――私が……、好きで隠してるとでも思ってんの?」
目が妙に熱くなり、滲んでぼやけた景色の向こうで、隊長が目を見開いた気がした。
「私がっ……、好きで人から距離取ってるなんて、本気で思ってんの!!?貴方は!!」
押さえつけられたような圧迫感を喉に感じながらも、そう怒鳴らずにはいられなかった。
本当は分かってる。沖田隊長は悪くない事くらい。知らないから、そう思われたって仕方ない事くらい。
分かっているのに、言葉は止まらなかった。
「私だって……、好き好んでこんな……こんな風に生きてるわけじゃない!!」
みっともないそんな言葉は、冷たい廊下に吸い込まれていく。
誰も巻き込まないように距離を置いて、寂しさと罪悪感を感じることを、望んでる訳ないのに。
普通の人みたいに生きたいと思ったことが、無い訳がないのに。
でも、どんなに強くそう思っていても、それを全部理解してもらえる手段が私には無い。
それが悔しくて悲しくてもどかしくて、頬を熱いものが滑り落ちた。
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伽那 - 一言で言うとこれめっちゃ好き (2019年11月26日 22時) (レス) id: dad38348f0 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - 沖田総悟さん» ありがとうございます!!もう!受験早く終われ!!!(泣)じわじわ更新ですが頑張ります! (2018年1月5日 8時) (レス) id: 3282eb2821 (このIDを非表示/違反報告)
沖田総悟 - とっても面白かったです!!キュンキュンもするし、見ながら泣きました‥。更新がんばってください!そして、受験ガンバってくださいね!!応援してます!! (2018年1月4日 19時) (レス) id: b86e1fcd7d (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - にんじん さん» あぁありがとうございます!!(泣)あと9日なんですよねー……ハハ。頑張ります! (2018年1月4日 14時) (レス) id: e79ecf6629 (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - 受験頑張ってください!応援してます! (2018年1月4日 14時) (レス) id: 1018656ff9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜夜華 | 作成日時:2017年9月29日 20時