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*
でもそんなはずは、と考え込んでしまった研磨さんに、とりあえず進みましょうよと声をかける。
また休憩できそうな場所を探しながら……と思って前に向き直った瞬間。
「…………え?」
青根さんが空を見上げていた。そして、彼の上に影が落ちる。
つられて私も、蒼い空を見上げて――呆然とする。
「ガ」
蒼い空、白い雲。それらが広がっているはずの、私達パーティの頭上に。
突然、どんな怪獣でも真っ青になるほどの、何メートルもある、不気味な紫色の――モンスターが現れて、低い唸り声を出した。
全員で呆気に取られる。こちらを見下ろしてきた"ヤツ"は、ふしゅるるるとそれはもう恐ろしい音量で呼吸をしていた。
「…………思い出した」
青ざめた研磨さんが、ぽつりと話す。
「この地域のボス級モンスター……それが来たら、他のモンスターでさえも逃げ出すっていう」
「…………」
全員が一度研磨さんを見て、それからまたヤツを見上げた。
そして、研磨さんはフードを深く被り直し、ボソリと付け足す。
「目が合ったら、それが交戦の合図……」
「あーーーー!? 今目ぇ合った!?」
「何してんだアホ!」
頭を両手で抑えて喚く日向さんに、影山さんが怒鳴った時。
ドス、と地響きがした。
――ああ、そうか。そういうことですか。
こいつをどうにかしないと、前には進めない、と、
「とっとりあえずやるぞ! 影山矢ぁ貸して!!」
「は!? ふざけんな日向、コイツ多分――」
パニックになった日向さんは、影山さんの制止も聞かずに背中から矢をぶんどると勢いよくヤツに投げつけた。
が、しかし。
コツン、と硬い鎧にでも当たったような、場に不似合いな軽快な音。
研磨さんが二、三歩後ずさりながら、また付け足した。
「…………一回何か攻撃したら、消滅させないとついてくる…………」
「あーーーー!? おれやっちゃった!?」
「このアホ!!」
それがスイッチだったらしい。足元から伝わる振動、ヤツが動き出す。
これで倒せだなんて――そんなの今は不可能だ、と全員が一瞬で悟った。が、迫りくるモノからは逃れることができない。
でも、逃れられなくても。
「どうする――」
「逃げましょう!!」
「A!?」
*
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年8月1日 18時