12 ページ29
*
「ちょ、来いよ！ 助けてやるから!!」
「ピィ」
ピィ、ピィ、ピィ……か細い鳴き声。
私達は身の危険を案じてまた半歩下がった。それに、これ以上長くかかったら土台も危ないのでは。
その時。
「ピィ」
ヒナガラスが動いた。ピィピィ鳴きながら、日向さんの腕をすり抜けて――頭の上にとまる。
おおお、と下で感嘆していると、日向さんが慌てた声でわたついた。
「え、あれ？ アイツどこ行った!?」
「テメェの頭の上だよ」
「えっ、あ、ほんとだ――」
日向さんがホッとしたのも束の間。
どうやら上でバランスを崩したのがいけなかったらしい、そしてそろそろ限界だった。
土台の彼の足がふらついて、「ギャー!?」日向さんは叫び声とともに、真後ろへ落ち、
私達が思わず目を瞑って首をすくめた時、地面に響き渡る鈍い轟音がした。
*
「あーっつー……」
「まだ痛むんですか？」
私の問いに日向さんは居心地悪そうに頷いた。
「まぁな……」
「そりゃあんな落ちかたしたんだからね」
研磨さんは、フラフラのヒナガラスにエサになりそうなものを食べさせていた。
あのあと――こわごわと目を開けた私達の前で、日向さんは目を回して気を失っていた。土台の彼は平気そうだったが、それでも後頭部にたんこぶができたので冷やしている。
でも、三人――いや、二人と一匹は無事だ。ピィピィ元気に鳴いているヒナガラスに、どこかホッとした様子の研磨さん。
……思ったんだけど、カラスなのに鳴き声ピィなんだ……。
彼の名前は青根さんというらしい。そういえばお名前は、とお尋ねしたところ、「…………青根」と長い間があってそう答えた。
彼は多くを話さない。でも身なりから察するに格闘家で、経緯から考えるに体は頑丈だ。
今は怪我人がいるので、また全員でぐるりと輪のようになっていた。影山さんが腹減ったとか言うからだ。
「で、そいつどうすんだ」
水で喉を潤してから、影山さんはヒナガラスを見て言う。
「せっかく助けたんだし……放してまた死にかけられても困るよね」
「なら、連れて行きますか？ それほどお荷物でもないわけですし」
「じゃあそうしようぜ！ 影山もそれでいいよな？」
「まあ、いいけど」
それで。と、私達の視線は自然と青根さんに。
なぁ、と日向さんが話しかけた。
「おれたち、大王様のところに行くつもりなんだ」
「…………」
「だから――どう、する？」
「…………」
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「ハイキュー」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：スマトラ島のラフレシア | 作成日時：2016年8月1日 18時
