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*
「……何で?」
「その時はわからなかった。でも……しばらくして、大王の側近になったみたいだ、っていう噂が流れはじめたんだ」
大王の側近。
なんか……なんか、ピンときたような、そうでないような……気のせいかな……?
「まさかとは思ったけど。でも一回、ひょっこり現れて」
…………ああ。
「完全に側近になってるみたいだった。様子はあんまり変わってなかったけど、目とか赤かったし。真っ赤な服で」
隣の影山さんを小突くと、影山さんは顔ごと逸らした。……気付いたみたいだ。
「でも、おれは村に戻ってきて欲しいんだ」
研磨さんは、そこだけ――その言葉だけ、やけにハッキリとした口調でいった。
それから、フードを被り直してまたぼそりと言う。
「助けたいん……だ。友達のこと」
助けたい。
そう思って、きっと一人で村を出てきたのだろう。ローブを汚して。余程強い気持ちなのだと思う。
でも……それよりも、私には気にかかることがあった。
「あの……研磨さん。お訊きしてもいいですか」
「……なに?」
「その幼馴染って、……あの、まさかですけど、寝癖の酷くてやたら胡散臭い……」
「……そんな感じだけど」
ああ、やっぱり。
でも何で知ってるの、と言わんばかりの研磨さんに、影山さんは放っといて私は言った。
「私、Aとこの隣の……影山さんは、前は大王様のところにいたんです」
「……ああ、それで」
「多分研磨さんが感じた『気配』も、私達に残っていたんだと思いますけど。とりあえず、私達研磨さんのお友達のこと知ってます」
研磨さんは一瞬キョトンとしてから、こわごわと「……どんなだった?」と尋ねてきた。
少し考えてから答える。
「……優しかったです。胡散臭いのはいつものことで」
「そう」
「昔のこと聞くとはぐらかされましたけど。でも――いい人、だったと思います」
「……そう」
これが、私の黒尾さんへの見解だ。
影山さんも隣で頷いていた。二人、あんまり接点はないように見えたけど――大王様の側近、一番とは言わないまでも結構近くにいたのだから。怪しげな水晶を片手に。
すると、それまでの話を黙って聞いていた日向さんが口を開いた。
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年8月1日 18時