東卍の白豹Part2

89話:想い ページ44

.




ワカは、泣きながら話す真一郎を静かに見る



真一郎は、いつも側にいてくれた雪の顔を思い出す


優しく笑って、けど時々すごく悲しそうな顔をして
何か言いたい事があっただろうに
困らせたくないからって自分の事はあまり話さなかった
いつも優先するのは自分よりも真一郎で＿＿＿
文句の１つも言わずに尽くしていてくれた
その結果がアレだ＿＿＿



この世界での雪を見た時は
かつての“夢”を追いかけて兄ソックリな格好をして
バイクに乗って、笑っていて...
変わらない声と表情で『真一郎君』って呼んだ

その瞬間、言えずに自分の中で燻っていた想いが溢れてきた






真一郎「こんな事っ、オレが言う資格なんてねぇ
最初の世界でもまともに口に出さなかった...ｯ
伝えなかった！！

けどっ、どうしようもねぇぐらい好きだって...
雪に惚れ込んでたって思い出したんだ！！
なぁワカ、オレはどうすりゃいいっ？」





ワカは立ち上がると、真一郎に背を向けながら言う



若狭「...よくオレの前でそんな事言えたな」

真一郎「...」


若狭「けど、雪を傷付けたクソ野郎はオレも同じだ
真ちゃんが死んで傷心していた所にオレが追い打ちをかけた
だからオレが口出しする権利はねェ
...真ちゃん、雪が起きたら今の話全部話せ
後は雪次第だ」





真一郎は、雪の血で濡れたシャツを握って言う



真一郎「...オレはもう雪に会えねぇ
きっとこの“呪い”は周りを巻き込むんだ
大事な奴らが傷付くなんて耐えられねぇ
もう、いっそのこと死ぬか＿＿＿」



ワカはそんな事を言う真一郎を蹴り飛ばして怒りを顕にした




若狭「真ちゃん、オレらが惹かれて慕ってた総長は
そんな馬鹿だったのかよ？
ンな理由で“はいそうですか”って大人しく引き下がると
思ってンのか？ふざけんなよ！
雪だって幾ら聞き分け良くても
それだけは聞かねぇよ！
これ以上雪を泣かせたら真ちゃんでも許さねェ！」


真一郎「オレは雪を不幸にしかしない」





暗い顔をしたまま同じ事しか言わない真一郎に
ワカは呆れたように大きくため息をついて
頭をガシガシとかいて言う



若狭「...こンな事言ったら雪怒ると思うけど
真ちゃんが弱虫すぎだから言うワ」

真一郎「は？」





若狭「雪の初恋相手、真ちゃんなんだよ
オレ、恋に落ちた瞬間を横で見てたンだわ

最初の世界では曖昧な関係だったかもしれねぇけど
両想いなのに違いねぇんだ」

90話:叶うはずの未来→←88話:呪い

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す