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『…』
次に目が覚めたときに見えたのは白い天井だった。
どこだここ、と思い体を動かそうとすると、激痛が走る。
『い゛っ…!!』
言葉にならない悲鳴を上げると、近くにいた影がもぞ、と動いた。
「……A!目が覚めたの!?
待ってて、今お医者さんを呼んでくるからね…!」
おばあちゃんがかばっと起き上がり、早口で話した。パタパタと慌ただしく病室を出ていくのをぼんやりと見送る。
あー、そうだった、車に跳ねられたんだった。
だからこんなに痛いのか。
それから軽く診察を受けて、助けた子供はかすり傷で済んだことを知らされた。
どれぐらいで治るかな、大会も近いんだ。次のは無理だとしても、その次ぐらいにはどうにか…
なんて考えを、医師は無情にもぶった切ってきた。
「…鈴鳴さん、右足に酷い損傷が見られます。完全に治ることはまずないでしょう」
落ち着いてください、と医療物のドラマでよく聞くセリフのあと、静かにそう告げられた。
…ああ、なんとなくわかってた。
右足の感覚が、殆どないんだよ。
医師曰く、車にはねられたときに後ろに出ていた右足だけ、他よりも重症化してしまったらしい。
リハビリをしたら歩けるようにはなるが、正座とか、深く曲げることが難しい。
バレーボールのように空中で足を曲げてバランスを保つことなんてもっと難しい。
『…そうですか』
「ですが、鈴鳴さんの回復とリハビリ次第で、前のようにとは行かなくても、まだバレーボールを続けられる可能性は十分にあります。
諦めなければまた、跳べるようになりますよ! 一緒に頑張りましょう!」
今思えば明らかに落胆していた俺への慰めだったのだろうか。
でもその言葉だけが俺を支えた。
それだけを頼りに、毎日必死になってリハビリをした。
元谷と臣もお見舞いに来てくれて、その度に明るい話をしたり、バレーの話をしたり、最近のおかしかったことを話したり、いつもどおり接してくれた。
また、バレーボールがしたい。
また、飛べるようになりたい。
憧れた兄のようになりたい。
二人とバレーボールがしたい。
それからは毎日リハビリを続けた。
3ヶ月間のリハビリを経て、俺はまた歩けるようになった。
その後すぐに元谷と臣に付き合ってもらいながらバレーボールも練習して、少しずつ前みたいに動けるようになっていった。
きっと跳べる、絶対にまた跳べるようになる。
それだけを信じて必死に練習していた、のに。
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あなくま(プロフ) - あっびーさん» ありがとうございます!気まぐれ更新ではありますが頑張ります!澤村さん直してきますすみません (7月3日 6時) (レス) id: 995ed5925a (このIDを非表示/違反報告)
あっびー - コメン卜失礼します!話とてもおもしろかったです!がんばってください!あと澤村が沢村になっていました (7月2日 15時) (レス) @page5 id: 9335c42a96 (このIDを非表示/違反報告)
あなくま(プロフ) - 怜央さん» ほんとですね…教えていただきありがとうございます!実は前にも消えちゃってたのでまた同じようなことがあるかもしれません…気をつけます! (2022年10月14日 20時) (レス) id: 995ed5925a (このIDを非表示/違反報告)
怜央(プロフ) - コメント失礼します!36話が消えちゃってますよ〜! (2022年10月14日 20時) (レス) id: 8acdf4d0f3 (このIDを非表示/違反報告)
あなくま(プロフ) - ありがとうございます!できるだけ早く更新できるように頑張ります! (2022年10月13日 16時) (レス) id: 995ed5925a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あなくま | 作成日時:2022年9月24日 14時