♂/電車/SF(少不思議) ページ24
太陽に照らされた緑が眩しい。
「次はぁ△△ー、△△ー」
電車に揺られ、実家へ向かう夏。
新幹線だの特急だのと洒落た、
便利な現代の文明利器なんぞない片田舎。
一応、電車は通るのでまだマシだろう。
ガタゴト揺られ、たまに無人駅で扉が開く。
誰も降りないし誰も乗らない。
扉が開くたびにセミの声が響き、
直射日光を受けるコンクリから発せらる熱気が入り込み、クーラーで冷めた肌を撫でる。
用がないからと、降りたことのない駅ばかりが過ぎる。
「〇〇ー〇〇ー、おおりのさいはー」
放送が鳴り響く。
また扉が開く。
「あははは」
虫とり網を担ぐ、
何人かの小学生が扉の前を走り去る。
熱中症対策だろうか、
全員がデカめの麦わら帽子だ。今どき珍しい。
ひとりが扉のまえで止まり、こちらを見た。
「…え」
あの子は
「まって!」
飛び出すように俺は降りてしまった。
同時に閉まる扉。
用のない駅。夏の茹だる空気が身体を包む。
電車は動き出していった。
あははは
.あははは
..あははは
耳に残る、子どもの笑い声。
降りる前にこちらを見たあの子は、
昔、喧嘩別れして消えた親友だった。
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作者名:秋花火 | 作成日時:2015年12月3日 20時