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69話 ページ21

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片手に乗せたトレーの上に、小さいタルトが乗っているのが見えた。



「おや、ブルーベリーですか」

「うん。ペンギンちゃんの目の色にそっくりでしょ?金魚ちゃんとこの先輩に教えてもらったんだぁ」



ハーツラビュルでケーキが作れる人…と考えると、恐らくトレイさんだろう。



「はい、ペンギンちゃん口開けてー」

「だから口を開けるのはやめろって……!!」

「あー」

「Aさん!!!!」



言われた通り、私は口を開ける。
だって美味しそうだし。



「アズールくんはどうしてそんなに焦っているのですか?」

「そ、それはですね………ええと…」

「あー無理無理。アズールぜってぇ言えないじゃん」

「フロイドに同意ですね」

「お前たち!!!」



アズールくんは囃し立てられて、茹で蛸のようにもう真っ赤だ。目の縁に涙も滲んでいる。



「泣かないでください、アズールくん」

「泣いてません………!」

「あはは、泣き虫アズールに戻ったんじゃね?」

「う、うう……………………ッッどうせ僕はグズでノロマな泣き虫のタコ野郎ですよ!!」



アズールくんの中で何かが爆発したらしい。
いつもの冷静沈着な彼からは予想が着かない程に、 大声で泣き叫んでいる。



「アズールくん、1口差し上げるのでどうか泣き止んでください」

「…っう、Aさん………」



私はフォークでタルトを1口大に切り、アズールくんの口元へ差し出した。



「あーあ、いいなぁアズール」

「僕達も後でやってもらいましょうか」



アズールくんが嗚咽をしながら口を開く、その時だった。



私とアズールくんの間に見覚えのある時空の歪み(・・・・・)が発生し、中から異世界に置いてきた筈の友人(道化師)が頭を出し、タルトを1口食べたのだ。



「ハハハーハハ!大変美味しいね!!」



……ゴー……ゴリ、くん?



「っ、貴方!」



声を上げたのはアズールくんだった。
だが、言葉を発しさせないとでも言うように、コツコツとヒールの音が聞こえた。



「アッ……………」



ついでに、監督生さんの悲鳴も。



「……口を開けるのはウツボの求愛行動。

…………………ではありませんでしたか?」







私と瓜二つな姿。

心地良い声。








「フェー、ヂャ……………?」







私の絞り出すような声に、愛しい愛しい片割れの口元は弧を描く。



「ええ。貴方のフェーヂャですよ。ぼくの姫君(プリンセス)

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アババババ - 80話の最後のフロイド君の発言で草生えました! (2022年11月19日 23時) (レス) @page32 id: 222bdc0355 (このIDを非表示/違反報告)
あ〜ちゃん(プロフ) - 猫さん» 承認しました!こちらこそよろしくお願いします! (2020年7月23日 21時) (レス) id: 9c71528097 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - あ〜ちゃんさん.......私も好物なので有り難いです......!ぜひ御願いします! (2020年7月23日 21時) (レス) id: fc34ad99ff (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - あ〜ちゃんさん» 柘榴です!よろしくお願いします! (2020年7月23日 18時) (レス) id: f20993b4a3 (このIDを非表示/違反報告)
あ〜ちゃん(プロフ) - 猫さん» OKです!ありがとうございます!! (2020年7月23日 13時) (レス) id: 9c71528097 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あ〜ちゃん x他1人 | 作成日時:2020年6月29日 0時

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