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「余りにも遅いから、僕から来ちゃった」
良かったよね?と歩みを進めて向かって来るのをどうしていいかわからない。
ベッドから降りて逃げようにも正面から来るからどうしたって避けられない。
「なんで、、、」
緊張からか喉が乾いて掠れた声しか出なかった。
「なんで?電話で言ったのに」
暗闇に浮かぶ声はずっと半笑いのように聞こえて気味が悪い。
どうしよう。
センラ、どうしたらいい?
怖い、どうやって逃げよう。
ベッドまで辿り着いたその人がこちらに手を伸ばしてくるのが見えた様な気がして、咄嗟に避けるように身体を捻らせたけれど遅かった。
思っていたより動きは早くしっかりと掴まれてしまった片腕はもう言うことを聞かない。
「僕たち、恋人同士なんだから」
(どうして、、、)
「、、、高瀬さん」
あまり話したことが無かったからか印象が薄かったからか、、、声だけでは判別が出来なかった。
腕を掴まれ容姿が何となくわかった所で見覚えがある顔だと焦点を合わせるとやっぱりよく知った顔で尚更どうしていいかわからない。
私の腕を掴んで離さない高瀬さんは知らない人の様な顔付きで見下ろしたままニヤリと笑うだけ。
「Aちゃんの物は全部揃えてあるよ。行こう」
「い、嫌です」
離して欲しくて腕を振ると余計に掴む力は強くなって爪先がくい込んで痛い。
行くってどこに?
ここが私の家なのに。
なんで入ってこれたんだろう。
色々と頭の中に巡るけどこのままでは自分の身が危ないことだけはわかる。
どうにかしないとと思うのに頭には何も浮かんでこない。
ずっと煩い心臓の音が思考の邪魔をしてくる。
(センラ)
考えないといけないのに、自分で何とかしなければいけないのに頭に浮かぶのは彼の事だけ。
離れたくないと、寂しいと拗ねた彼の顔が思い出されて行かないでと言えばよかったという後悔しか出てこない。
それでも何度も心の中では彼の名前を呼んで縋るしかなかった。
「ほら、行くよ」
「っ、離して!嫌!」
引き寄せられそうになる身体を何とかしようと力いっぱい抵抗すると舌打ちが聞こえた気がした。
更に強くなった力と、低くなった声。
「手荒な真似はしたくないなぁ」
首筋に突然尖った冷たい感触した。
動かないで、切れちゃう。と言う声にとりあえず動きを止める。
(なに、、、)
目線を動かして下を見るとナイフの様な物が見えて息を飲む。
まさか本当に切るわけが無いだろうと視線を高瀬さんへと向けた。
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あーりん(プロフ) - めめさん» ありがとうございます!甘い二人が書きたい私としては早くこのシリアスを抜けたい所ですがしばしお付き合い下さい!笑 (2019年8月27日 21時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
めめ(プロフ) - 更新お疲れさまです(^^)いつも楽しみに待ってます!シリアス展開なのに先が気になってワクワクしていますw更新頑張ってください! (2019年8月27日 16時) (レス) id: 08075475cf (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - 怜莉さん» 楽しみに待って頂いているのがすごく嬉しいです!( ;__; )コメント頂けてとても励みになりますー!少しシリアスなお話が続きますがお付き合いよろしくお願いします! (2019年8月27日 15時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
怜莉(プロフ) - 更新ありがとうございます!いつも楽しみで、今か今かと待っていますw個人的になんで話数毎の評価ができないんだーーーーー!!!と嘆いていますwこの先の夢主ちゃんとセンラさんがどうなるか気になります!更新頑張って下さい!待ってます! (2019年8月27日 10時) (レス) id: 0408e10153 (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - ぷーさん» ありがとうございますー!これからもよろしくお願いします!あと、課題頑張って下さい!!w (2019年8月27日 1時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あーりん | 作成日時:2019年8月8日 4時