指先と生け贄【両面宿儺】

ずんだ生クリーム味 ページ26

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「後悔なんてものは生きていれば必ず付いてくるものなんだから、少しくらい気楽に行こうよ」






はい、あげる。そう言われて差し出された喜久福を、私は先生の手からゆっくり受け取る。


確かに、後悔することを前提に生きていれば今より幾分か気が紛れるのかもしれない。


少なくとも、また後悔したと繰り返し落ち込み続けるよりは断然マシだ。



……けれど、先生の言葉に私はどこか引っかかった。

まるでその後悔を経験してきたかのような重たい口ぶりに、少し違和感を覚えたのだ。






『先生も、後悔ってしたことある？』


「……そりゃあ、もちろんあるよ」






目隠しに隠された眼がどこを見ているのかは分からないけれど、なんとなく先生は私が思っているより遥か遠くを見据えているような気がした。



誰しも心の内には、悩みの一つや二つ抱えているものなのだろう。

この人がどんな後悔を抱えて生きているのかは全く分からないけれど、いつかそれを知るときが来たら今日みたいな言葉をかけてあげようと思う。






『そっか……なんか、親近感がわきました』


「こんな話で親近感って、なんか嫌だなあ」


『はは、確かにっ。それもそうですね』






きっとこの人は、人の気持ちを探るのが上手い人なのだろうな。



そんなことを思いながら、私は貰った喜久福を一口頬張る。


一瞬で通り過ぎて行く外の景色は、段々と縁の無い知らない土地のものに変わっていく。






『……ん、美味しい』






それでもまだ口の中には懐かしいくらいに故郷の味が拡がっていて、なぜだか少しだけほっとする私がいた。







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