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最後のお別れ ページ19

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「では、弟さんがいらっしゃいましたら準備をさせていただきますのでお待ちください」


『……はい』






ホールの中にこだまする、自分の情けない声。

スタッフの人にそう言われ、私はじいちゃんが眠る箱の隣で一人悠仁を待つことにした。



あれから五条先生は一通り話終わると、悠仁のことは僕が待っておくからと、私に火葬の準備を進めてくるように促した。

それはありがたいようで、でも私からしてみれば隣にいてくれた方が嬉しいような気もする。


いつまでも子供みたいなワガママはやめろと、昔からじいちゃんによく怒られていた時とこれじゃあ何も変わらないな。






「姉ちゃんッ!ごめん、お待たせ!」






それから暫く静けさに浸るように私がじいちゃんとの思い出を回想していると、額に汗を垂らした悠仁が慌てた顔でやって来る。

昨晩ぶりの弟の顔はいつもとなんら変わらなくて、私は安心しほっと胸を撫で下ろした。






『……話はあらかた先生から聞いた。あんまり一人で抱え込んじゃだめよ』


「いや、それは姉ちゃんも同じだろ。体は平気か?朝飯ちゃんと食った?」


『食べたよ、コンビニのおにぎりだけど。体も、あんたよりか普通』






そんなふうに言い合って、二人してけらけらと笑い合う。


そうだった、これが私達姉弟の日常だ。

じいちゃんは居なくなってしまったけれど、私達の関係はそんなことで揺らぐわけがないし、ましてや呪いだろうが引き裂けない。


どんな不幸に恵まれたって、最悪がまとわりついたって。


私は家族を守るためなら、どんな事でもしてやるさ。






「お揃いになられましたか?」






私達を見ていたスタッフの人が、気をつかって優しく声をかけてくれる。


そろそろ本当にじいちゃんともお別れだ。


最後に棺の窓を開け、二人でじいちゃんの顔を眺める。






『はい……よろしくお願いします』






自他共に認める仏頂面のわりには、安らかな寝顔だった。







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煙→←生け贄



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いか焼き - 好きです!!! 最高すぎます、、、応援してます!今から2を読んできます!楽しみすぎる…! (2022年7月4日 2時) (レス) @page50 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 宿儺の声が頭の中で聞こえたらワイある意味死んでう( ´ཫ`)って思いながら見ました←めっちゃ面白いです!!応援してます( ˃ ˂ ) (2022年1月25日 0時) (レス) @page31 id: dce21dc0b1 (このIDを非表示/違反報告)
古椎エゴ(プロフ) - Tomorrowさん» ご指摘ありがとうございます。変換ミスしていたみたいです!知らせていただき助かりました! (2022年1月24日 17時) (レス) id: c3c7b307dc (このIDを非表示/違反報告)
Tomorrow(プロフ) - コメント失礼します。とても面白くて何度も読み返してます!ところでなんですけど、祥子ではなく硝子だった気がします!間違えてたら申し訳ないです! (2022年1月24日 17時) (レス) @page30 id: 81fe567fc7 (このIDを非表示/違反報告)
ミーコ(プロフ) - 面白いです!宿儺推しなのでこの話はとても好きです!がんばって書いてくださいね!応援しています! (2022年1月23日 23時) (レス) id: b974f3c01e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2022年1月22日 17時

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