【おそ松さん】お前らがいる限り、元には戻れない。２

39話。 ページ8

子猫が驚いたような声を上げた。

霞んだ瞳で確認出来たのは、
小さな白い毛に赤の模様が点々とついた子猫を
誰かが抱き上げたということだけ。


コツコツという足音がこちらに向かって来ている。




「ねえ。何してんの？」

薄暗い路地裏の中で、
この空間で聴こえるはずのない声がした。


「は？男には興味ねえんだよ。さっさと消えろ。」

男がそう言うと、
現れた男は、ははっと不気味な笑みを浮かべ、
男の首元をぐいっと自分の前に引き寄せた。


「うおっ！？」


彼は男の耳元で囁いた。

「大の大人に向かって生意気な餓鬼が。
質問した内容まで理解出来ないの？」

また笑みをし、男を力一杯壁に叩きつける。
痛々しい音が辺りに響き渡る。


「なあ？そこ、どけよ。」

そんなことには構わず、彼は
変わらず清々しいほどへらへらと笑っていた。


その場にいた彼以外の誰もが、
身が震えるほどの悪寒を覚えた。



「お前ら、やっちまえ！」

突き飛ばされた男の仲間が手下に命令を下す。
それに従い、複数の人が立ち向かってきた。


「本当に往生際が悪いねえ〜。」

次に起こることがお見通しなのか、
彼はその場に留まっていた。




みぞおちに一発、背中に回られ首を絞められ…と
残酷な一撃を食らわされ、立ち向かってきた男達は
一瞬にして彼に倒されてしまった。


「やっと終わった。」

この場には被害者の私が一人いるだけだった。
少しだけ、恐怖が襲ってくる。


「んー、まあ良いか…。大丈夫？」

彼は、私に心配の声をかけ、手を差し伸べた。

フードを目深に被っているが、
誰だかはっきり分かった気がした。

この人は…。



残りわずかな気力を使い、私は彼に言った。












「う……後ろ！！！」
「え。」

言うのが遅すぎたのだ。



切れるような風の音が彼に向かって注がれる。
古びた鉄パイプが彼に接触した。




「はぁはぁっ…。ざ、ざまあみやがれ！！」

倒れていたはずの男の一人が後ろにいたのだ。
自分を悔やみ、私は意識を手放した。





「かっこつけてるのが悪いんだ…よ！？」

バタリと男は倒れた。
その後ろには殺気に満ちた目が二つ。


そう。男の背後にも【人】がいたのだ。












「お兄ちゃんの真似、下手だな〜。」

赤いパーカーを羽織った、【本物】の彼が。

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