【おそ松さん】お前らがいる限り、元には戻れない。２

45話。 ページ15

松野家にある黒電話が鳴り響く。
異様な雰囲気が漂っているふうにも感じる。

「んもう。誰だよ、こんな朝に。」

昼過ぎなのにも関わらず、パジャマ姿で現れた
おそ松は、不貞腐れながらも電話に出た。


「はい、松野ですが。」
「松野様でいらっしゃいますでしょうか。
落ち着いて聞いて下さい。」

「どういった用で…。え？」


衝撃から通話途中の受話器を耳から離してしまう。
おそ松は目を眩ませた。


「おそ松兄さん誰だった〜？」

居間にいた末弟が兄にそう言った。

しかし、おそ松は末弟の言葉には耳を傾けず、
ブツブツと言葉にならない言葉を発している。

頭に手を当て、髪をクシャッと掴んでいる姿から、
末弟は只事ではないと察した。


「おそ松兄さん…？」
「…どうかしたの？」


居間にいた末弟以外も電話の前に集まる。
同時におそ松を見つめた。

様子がいつもと全く違う。
皆、頭によぎるのは同じことだった。



「ただいマッスル！」
「今日のにゃーちゃんと可愛かったあ！」


あれからしばらく経ち、空が赤黒く染まる頃、
残り二人の兄弟が楽しそうに帰ってきた。

二人とも都会の会場で開催された
スペシャルライブに行っていたらしい。


「にゃーちゃんとSaoriのコラボライブに行ったんだけどね！って…どうかしたの？」

瞬時に空気が重くのしかかる違和感に二人とも違和感を覚える。

居間の戸を開けると、
元気の無い兄弟が卓を囲み、俯いていた。

長男だって独り言ばかり言ってる。


一言で言うと、まるでカオスだ。


母親である松代が、二人の前に立った。



「いい？特に十四松。落ち着いて聞くのよ…。

【沙織ちゃんが、交通事故にあたらしくって、
意識がまだ戻ってないらしいの。】」

松代が詳しいことを説明すると、十四松の肩にそっと両手を置き、唇を少し噛んだ。


「嘘だよね？ださっきまでライブで歌ってたし…。僕、そこで見てたし。ねえ！嘘だよね！？」


逆に松代の肩を掴み、激しく揺らす十四松。
それを一松が落ち着けるように取り押さえた。

「十四松、落ち着けって…！」

「そうだ、テレビっ…！」


十四松がテレビが付けると、ニュースキャスターが
タイミング良く、臨時ニュースを伝えていた。

内容は人気歌手のSaoriの事故を取り扱っていた。
ドラマのワンシーンを見ているかのようだ。


「沙織ちゃん…！」

戸を勢いよく開けると、
十四松は何処かへ走っていった。





兄弟達に疑問を残しながら。

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