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97、忘れない ページ47

ビックリした。

彼の口から出た名前に

心底ビックリした。



「ど、うして……」

「……前に。Aのこと紹介してくれって頼んだ時茜ちゃんに聞いたんだ。
Aには忘れられない男がいるって」


涼が、冷めてしまった紅茶をグイッと飲み干した。

そして空になったカップをテーブルに戻し、ゆっくりと私を見た。



「俺が今、振られるのはソイツのせい?」


その顔に。
赤く潤む瞳を私に見せまいと横を向いた涼の姿に。


「ごめんなさい…っ、ごめんなさ…っ」


堪えられなくなった涙が溢れ出した。



こんな結末を望んでいたわけじゃなかった。

涼に会って

涼の優しさに触れて

涼と幸せになりたいと思っていた。




「ごめんなさい…っ、本当にごめんなさい…っ」



うずくまり謝ることしか出来ない私の背中に、大きな温かい手が触れた。



「……いい。もういいよ」


その手の温もりに。
頭上から聞こえる鼻を啜るような小さな音に。

ますます私の涙は止まらなかった。







靴を履いている間、背中に涼の視線を感じていた。

「今日は、送らないから。気を付けて帰るんだよ」

「うん…」


リビングにいるであろう涼のお母さんは、出て来なかった。

「じゃあ…帰るね」

涼のお母さんにはたくさん優しくしてもらったから。
リビングに向かい一礼をして、涼の家を後にした。


玄関が閉まる音を背中で聞きながら、グイッと目元を拭った。



今日のことを忘れない。

私が傷付けてしまった人たちを。

私を本当に大切にしてくれた涼のことを。


私は絶対に忘れちゃいけない。

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設定タグ:オリジナル , 恋愛 , 青春   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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ユチコ(プロフ) - Blueheartさん» コメントありがとうございます!嬉しい〜( ;∀;)更新頑張ります〜☆ (2018年7月29日 16時) (レス) id: 05c74de8b4 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 更新頑張ってください! (2018年7月26日 18時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユチコ | 作成日時:2018年7月16日 12時

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