手のなる方へ ２

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「負けたって…おいAそれって…」


私の言葉に反応したエースが怪訝そうに眉を顰める
尚も止まらない笑いをどうにか抑えて、目尻に溜まった涙を拭うとマルコさんの方へと顔を向ける
そこには不思議そうに首を傾げるマルコさんがいて

一つ小さく息を吐くと、ゆっくりと言葉を紡いだ


「…ねぇ、マルコさん。私は多分、マルコさんが言っていた通り人として歪んでいるかもしれない。
皆の輪の中に入りたいくせに臆病で天邪鬼で。怖いくせに無鉄砲なの。

でも…もう取り繕った仮面を外したい。まだ、マルコさん達に言えない事もあるし…今までみたいに皆の事を拒絶したりするかもしれないけど。いつか、もっと素直になれたら全部ちゃんと聞いてほしいと思ってるんです。
だから…この、父さん率いる『白ひげ海賊団』の家族になりたい。こんな私だけど…それでも“家族”だと、“妹”だと言ってくれますか？」



全部、本心
いつだって彼らは本気でぶつかってきてくれた
だったら、私もちゃんと本気で応えていかなければいけないと思った

でもやっぱり長年取り繕ったモノは簡単には外せないし、本音を言うということは“怖い”と思う
そんなめんどくさい自分でも、受け入れてくれるというなら


＿＿私がこの世界に来た事に、少しでも意味を感じる事ができるから



「……」



医務室を静寂が襲う
私の発言の後に、誰一人として口を開く人がいない
気まずくなって
居た堪れなくなって
視線を泳がせた後に、その視線を落として俯く

＿＿やっぱり、無理な願いだったのかな

なんて考え始めたところで、図ったように周りから一斉に深い溜息が聞こえた
何事かと顔を上げようとするも、それは大きな手によって遮られてしまう
頭に乗せられたその手の主は、ワシャワシャと私の頭を撫でながら言葉を発した


「……お前さんはホンットにバカだねぃ」

「なっ…！？」


抗議しようと勢いよく顔を上げると、そこには思いの外近い距離にマルコさんの顔があって
それに驚いて目を丸くしていると、マルコさんは先程より優しい手付きで頭を撫でながら言葉を続けた


「一度言った事は覆らねぇよぃ。何度だって言ってやる。お前は白ひげ“ エドワード・ニューゲート”の娘で、俺たち“白ひげ海賊団”の大事な妹だ。
どんなに臆病でも天邪鬼でも、跳ねっ返りでも。俺たちは絶対見捨てねぇよぃ。

＿＿それが、“家族”だろぃ？」


その言葉が嬉しくて
視界が揺れて目の前があっという間にぼやけてしまった

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