手のなる方へ ２

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＿＿タン

一歩踏み出した足音がやけに大きく聞こえる
右手に握るのは、あの時初めてトリガーを引いた銃
“使えるか”なんて、答えはすぐそこにある


「あー…皆さん。申し訳ないんだけど、どこに弾が飛んでくか分からないので飛んできたら自分で逃げてもらえます？」


すみません、と小さく頭を下げると顔を上げて目の前の相手の顔を見やる
その表情はまさに“殺る気”に満ちている


＿＿そうだ、“これ”がこの世界だ



「…じゃあ」

「すぐに後悔させてやる…！」


その言葉と同時に、両者は地を蹴った＿＿









「…なぁ、おいエース」

「なんだよサッチ」


いつの間にか隣にやってきていたサッチが不意に話しかけてきた
話しかけている最中も、目線は目の前に釘付けのようだ


「Aちゃんて戦う事とかない、平和な世界から来たって言ってたよね？」

「…俺もそう聞いてたけど…」


そう、確かにそう言ってた
だからこそ、この決闘に意味なんてないと思ってた
なのに


「Aちゃんから攻撃こそしないけど…あんなに攻撃を避けられるモンなの？」

「…俺に聞くなよ…。アイツ、喧嘩の心得？だかはあるとは言ってたけど、喧嘩と戦闘は別物だろ？意味分かんねぇ」


勝負なんて、一瞬でつくと思ってた
それはここにいる誰もが思っていたと思う
たけどそれは見事に裏切られた

Aは軽々と繰り出される攻撃を躱していく
その動きは、とても戦いを知らない人間とは思えない程だ


「…ッ、ちょこまかと逃げやがって…！」

「避けない、とは言ってないからね。出来れば当たりたくないじゃない？」

「チッ…ナメやがって！！」


飛びかかってくる相手をヒラリと避ける

＿＿自分でも驚いている
こんなにも相手の攻撃を見極められるとは思っていなかった
今まで散々エースと鬼ごっこをしてきたから、反射神経が良くなったのか

でも、それにしてもこの反射神経はおかしい
それに、この感覚には覚えがある
初めてこの世界に来た時の、破落戸もとい海賊から逃げていた時に感じたモノと同じ感覚

どれだけ走ってもスタミナは普段より全然切れなかったし、大の男を蹴り飛ばした脚力も向こうにいた時にはなかったモノだ
言ってしまえば、“異常”ともなるモノ

一体、自分はどうしてしまったんだろう
変わり過ぎてしまった環境で、おかしくなってしまったんだろうか



「……楽しい…」


攻撃を躱しながら、僅かに湧き上がる感情を誰に聞かれる事もなくポツリと呟いた

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