手のなる方へ ２

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ソレは、自分達にとっては日常茶飯事というもの
だけど君は＿＿？



「マルコ隊長。…あら？Aはここって聞いたんですけど」


ノックの後に入るように促すと、顔を出したのはナースのリナだった
なにかとAを気にかけてくれていて、アイツ自身も戸惑いは見えるが懐いてきているようだ
首を傾げるリナに、ペンを止めるとククッと喉を鳴らして笑う


「…あぁ。フラレちまったよぃ」

「やだこんなイイ男フるなんてAは罪な子ですね」


お互いに顔を見合わせて笑い、用件はそれか？と聞くと少しだけリナの表情が曇る


「…あの。少し小耳に入れておいた方がいいと思ったので…。Aの事について」

「アイツがどうかしたのかよぃ？」

「彼女の体に、傷があったんです」

「傷？」

「えぇ。腹部と…腰の辺りに、刺し傷のような」

「刺し傷…？＿＿ッ、リナ！それまさか…」

「“刃物による貫通傷”、です。古い傷のようなので、A自身も痛がる様子はありませんでしたが…気になったので、一応ご報告に」

「なんでそんなモン…」



海賊で戦闘なんて日常茶飯事だ
この船は四皇であるが故に、他の海賊よりは戦闘になる事は少ないだろう
だが、それでも一度戦闘が始まればそこは生きるか死ぬかの世界
強き者が勝ち、弱き者は排除される世界だ

詳しい話は分からないが、Aの日常に戦闘はなかったハズだ
平和な世界で生きてきた彼女に、何故“そんな”傷が残っているのだろう


「…かと言って、バカ正直に聞いた所でアイツが素直に話すとも思えねぇよぃ」

「そうですね…。それでもだいぶ慣れてきてくれたので、時間はかかるとは思いますが…タイミングをみて聞いてみたいと思います」

「あぁ、頼むよぃ。お前はさしずめ、“姉”か？」


揶揄うようにそう言えば、最初こそ目を丸くしただけのリナだったがニヤリとまるで海賊のように笑った


「あら。この船には兄だけじゃなくて、姉もたくさんいるんですよ？可愛い妹が出来て嬉しいのは私達も同じです」

「クククッ…いやぁ姉達には俺らは敵わねぇよぃ。悪いが、頼むなリナ」

「えぇ、お任せください」


ニコリといつもの笑みを浮かべると、リナは小さく頭を下げてから部屋を出て行った


「…こんなにも愛されていて幸せなんだお前は…。早くそれに気付いてくれ…なぁA」


彼女がいるであろう甲板にそう呟くと、煙草に火を付ける
いつもは好きなこの味も、今は全くと言っていいほど感じることはなかった

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