手のなる方へ ２

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「し…死ぬかと思った…」


ちゃぷんと口元までお湯に浸かると、横からクスクスと笑い声が上がる


「やぁねぇ、人を処刑人か何かみたいに言うなんて。ちゃんと洗ったでしょう？」

「洗ってもらいましたけど！！いやでもちょっと思い出したくないって言うか！恥ずかしかったの極みです！！」


浴室に連れて行かれた私は、あれよあれよと言う間に身ぐるみ全部剥がされてオネーサマ方によってそれはもう綺麗に洗ってもらいました
えぇほんと、まさに全身くまなく隅々まで

ようやく解散され、湯船に浸かってやっと一息つけた所在です
ちなみに傷口にはビニールらしきものを巻かれているので肩まで浸かれるのは嬉しいところではある、のだが私が肩まで以上にお湯に身体を沈めるのは他にも理由がある


「……リナさん達、スタイル良すぎ…」


目の前の圧巻の光景
男なら誰でも一度は憧れるのではないだろうか
いやもうナイスバディ過ぎて自分の体が本当に貧相に見えて仕方がない


「Aだって悪くないスタイルだと思うけど？」

「ホントお願いしますやめてください心読まないで泣きたくなるから」

「どんだけ必死なのよA…」


“この状況下なら誰でもそうなりますって”
そう返そうとしたけれど、自分がダメージを喰らうだけというのが容易に想像できたので言い返さず湯に顔を沈める
コポコポと出る泡を眺めていると、いつの間にか隣にやってきていたリナさんが口を開いた


「…裸の付き合い、ってのもいいもんだと思わない？」

「え…？」


その言葉に思わず顔を上げると、少し困ったような表情を浮かべたリナさんと目が合った


「私達はさ、親父様直属のナースとしてここにいるから…娘としてこの船に乗るAとは少し立場が違うの。
だから“娘”としての気持ちを理解するのは難しいんだけど、“女の子”としての気持ちや思いは少しは寄り添えると思うのよ。
この船はほとんどと言っていいくらい“息子”しか乗っていないから…私達の存在がAにとって、落ち着く場所であればいいなぁって思って」

「リナさん…」


この船にはワケ分かんない人が多いけど
こうやって私の“居場所”を考えて作ってくれる人もいる
この湧き上がる優しい感情は、もう随分前から忘れかけてしまっているような気がする
あの頃よりずっと捻くれて、歪んでしまったけれど


「あ……あり、がとう…」

「フフ、どういたしまして」


この、“姉”のような存在の人達は素直に好きだと思えた

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