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「Aちゃん、涼太をいい感じに撮ってくれない?」
涼太のお姉ちゃんに頼まれたのは、写真を撮ること。私が写真を撮る事が好きだから頼まれたのだと思う、でも私は基本的に風景しか撮らない、ポーズやらはおまかせして写真を撮らせてもらった。
『パソコンに移してみましたけど、どうですかね?』
「わ!すごい!流石、めちゃくちゃいいよ〜!!」
『……これどうするんですか?』
「ん?アイツ頭は悪いけど顔はいいからさ、モデルにでも応募しよっかなって、売れそうじゃない?」
まぁたしかに頭は少し悪いが、顔はいいほうなんじゃないだろうか?私は幼い頃から彼をずっと見てるからどうも思わないんだけれど。男友達も涼太以外に居ない。
「ありがとね〜!」
『はい』
友人がモデル、そんなこと考えたことなかった。というか、あまり考えない事だろう。
カメラに残った彼の画像を整理していると肩を叩かれた。顔を上げ叩いた人物を見る、まぁ予想通り今カメラに映し出されている彼だった。彼はカメラを覗き込むと、にまーっと音がつきそうなほど口角を上げ笑った。
「どう?俺カッコイイでしょ?」
『……自分で言うのはどうかと思うけど、まぁ、そこら辺の男子に比べたらいい方なんじゃない?』
私がそういえば、彼はえへえへ、と気持ち悪い声を出しながら笑っていた。軽蔑するような目で見つめていると、彼は「Aっちがそう言ってくれること中々ないから、嬉しいっス」と、さらに頬を緩めている。
「で、今何してるんスか?」
『画像の整理』
「え!?俺の写真消してるンスか!?ダメっスよ!!」
『データ圧迫するし、りょーくんのお姉さんに写真は渡したし』
そうっスけどと口篭る彼に思わずため息を出してしまう、少し気が付いては居るが彼は私に依存しがちなところがある、これから先離れるかもしれないのに。
『毎日のように見る顔を写真に残してどうすんの』
それに、全部消してるわけじゃないし、と付け足すと急に抱きしめられる。暑苦しいのでその腕の中から逃れる。
彼に対して私も少し甘いのは重々承知、もう少しで、新生活も始まる事だし、少し対応を変えてみるのも手だな。
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作者名:杜若 | 作成日時:2020年8月20日 20時