episode.109 ページ7
◇貴方side
今日もまた、あの病室に来た。
誰もいなかったから奥の彼が眠っている横にある椅子に腰を下ろした。
「……寝すぎですよ、赤井さん」
？「そうよね、ほんと」
「ｯ！？」
後ろから聞こえた女性の声。
明美「こんにちは、宮野明美です」
車椅子に座っていた彼女。
明美「私の事を、助けてくれた先生ってあなたの事ですよね？」
「は、はい……」
明美「やっと会えたわ。ずっと、お礼が言いたくて探してたんですよ？」
「す、すみません。ずっと、あなたの病室に行けなくて……」
明美「いいんです、こうやって会えたんですから。
本当に、ありがとうございました」
「いえ、私のやりたかった事をやったまでですから。でも、元気そうでよかったです。ここまで一人で？」
明美「えぇ、でも大丈夫ですよ。リハビリしていますから。
やっぱり貴方は、優しい先生ですね。大くんが言った通りの」
「……えっ」
明美「大くんが、私が起きた後に教えてくれたんですよ。その通りの優しい先生でした」
なんて言ったんですか赤井さん。
明美「大くんが、あなたを選んだ意味が分かった気がします」
「……え？」
明美「コナン君から聞いたんです。先生はトリップしてこの世界の事を知ってるって」
おいちょっと何勝手に言ってるのよ、ちびっこ名探偵さんよ。私のプライバシーはないのか。遥か彼方に吹っ飛ばされたのか。
明美「だから私達のことは知ってるんですよね？
私、失恋したんですよ」
……え？
明美「あのメールの答えをちょうだいって言ったら、他に好きな人が出来たんだって」
「え、」
明美「どんな人なの？って聞いたら、危険な所に自ら突っ込んでいくやつで、しかもなかなか捕まってくれない猫みたいな奴だって」
……ん？？？
明美「あなた、ですよね？」
「え、違うと、おもい、ます……」
明美「え、でも……」
「あ、すみませんそろそろ時間なので……」
明美「あ、ごめんなさい話し込んじゃって。頑張ってくださいね」
「ありがとうございます」
そう言い残し、パタパタと病室から逃げた。
「……違う違う」
あの時も、貴方は私を見つけてくれたのに拒絶して酷いこと言っちゃった。
こんなに後悔してる私なんて、違うに決まってる。
看護師「先生、」
「うん、すぐ行く」
.
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作者名：ゆな
| 作成日時：2019年11月18日 11時
