episode.152 ページ50
◇貴方side
そういえば、何日かここで過ごしてたけどもう向こうの家に帰らなきゃいけないと迷惑かけちゃうよね。
ちょっと寂しいけど、いつでも来ていいって言ってくれたし。
あれから、私の家に沢山の盗聴器と盗撮器が見つかった。
怖かったけど、みんながちゃんと見つけてくれて安心。不安がないって言えば嘘になるけど。
そんな事を考えてると、後ろから右肩に何か乗った感覚。それから手がのびてきて私を捕まえた。
「赤井さん？」
頭が少し動いて、髪が少しくすぐったい。
赤井「A、ずっとここにいてくれないか」
「……え？」
赤井「Aと一緒に、ここに住みたい」
え、いいの……？
赤井「Aを……クソ野郎が踏み入ってウロウロ徘徊した家に帰らせたくないんだ」
「……」
赤井「そんな、俺のわがままを聞いてくれるか……？」
私が思ってたこと、分かっちゃってたのかな。
でも、こんな風に思ってくれてる人がいるって……嬉しい。
「はい、ありがとうございます」
すると抱き締められていた腕をまたぎゅっとしてくれて。
赤井「ありがとう。毎日Aからの“いってらっしゃい”と“おかえりなさい”を聞けるのが嬉しいよ」
“いってらっしゃい”と“おかえりなさい”
“いってきます”と“ただいま”
前の世界では、あまり言われなかったし言えなかった。
小さいときにお母さんが入院してしまって、お父さんは単身赴任。家には一人だった。
ご飯は近くに住んでいた叔母の家に毎日ご馳走になって。
だから、大切な人に向けてその言葉はずいぶん前から言ってないかもしてない。
「ありがとう、ございますｯ……」
毎日、言わせて下さい。
言う人も、言われる人も暖かくなるような、その言葉を。
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作者名：ゆな
| 作成日時：2019年11月18日 11時
