286話 兄弟弟子(善逸side) ページ13
「なあ.......いるんだったら、出てこいよ。聞こえるだろ?
答えてくれよ、
..........″兄貴″。」
消え入りそうな声でそう言うと、閉じた襖の向こう側から、微かに物の動く音がする
......嗚呼
やっぱり、そこにいる
不器用で意地悪で口の悪い、俺の兄貴が、そこに
「なあ兄貴......アンタが鬼になったことなんて、誰も怒ってねえよ。
じいちゃんもAちゃんも、兄貴の帰りを待ってる。......勿論、俺も」
俺はポツリポツリと言葉を溢すけど、その声は震えていて
怖い、怖いよ、どうしよう
俺、いったいどうすれば良いんだよ
そう思えば思うほど、手の震えも止まらなかった
「.......俺はお前の兄貴じゃねえ。口の利き方がなってねえな
少しはマシになったようだが....
相変わらず貧相な体をしてやがる。久しぶりだなァ善逸」
スーっと開いた襖と、現れる人影
あ、ダメだ
兄貴の音を壁抜きで聞いた時、俺の中で何かがストンと落ちた気がした
「変わってねえなぁ。チビで、みすぼらしい。軟弱なまんまでよ。柱にはなれたか?
なあ、おい善逸。雷の呼吸も、壱ノ型以外を使えるようになったのかよ?」
今までには_______兄貴が人間だった頃には、見たこともない笑顔で言う兄貴
.....その音は、人を喰った鬼の音だった
兄貴が、人を喰った
だから俺は、兄貴を斬らなくちゃいけない
同じ呼吸の継承者として、兄を_____兄の成れの果ての、鬼を
これは同門である俺の責任であり、役目であり
決して、炭治郎たちを巻き込んじゃいけない
「はは、適当な穴埋めで上弦の下っぱに入れたのが、よほど嬉しかったみたいだな」
「へえ、言うようになったじゃねえか」
目の前に立って俺を見ている男は、兄貴じゃない______
そう思うと、いつの間にか俺の体の震えは治まっていた
もう大丈夫、覚悟はちゃんと決まった
だけど、一つだけ聞きたい
「......何で、人を喰ったんだよ?」
Aちゃんのために自分の命を投げ打つまでに、丸くなったお前が
壱ノ型が使えない劣等感を吹っ切って、前を向いていたお前が
何で、人を喰ったんだよ
何で、帰ってきてくれなかったんだよ
「Aちゃん、ずっと気に病んでた。じいちゃんも、あれから全然寝てなくて
心配してたんだよ、なあ、お前のことを」
そこまで聞いても、兄貴の顔から、意地悪そうな笑みが消えることはなかった
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セブンス・エイカン(プロフ) - キメツ好きさん» 好きですか!本当ですか!?(喜)無一郎君はできれば助けようと思ってます、コメントありがとうございます.....!じゃんじゃん(?)救済して行きますよー! (2020年6月22日 22時) (レス) id: b773bec88c (このIDを非表示/違反報告)
キメツ好き - はぁぁぁ泣けますね.....やだ好きです.....()御館様もしのぶさんも助かって良かった!!玄弥くんは.....悲しいけど.....無一郎君は助かるんですかね?救済してください!お願いします! (2020年6月22日 17時) (レス) id: b2fc3cf6a1 (このIDを非表示/違反報告)
セブンス・エイカン(プロフ) - 中トトロさん» ありがとうございます!面白いと言ってもらえて嬉しいです!更新頑張りますー! (2020年5月21日 7時) (レス) id: b773bec88c (このIDを非表示/違反報告)
中トトロ(プロフ) - 続編おめでとうございます!とっても面白いです!これからも更新頑張ってください!楽しみにしてますよ! (2020年5月20日 23時) (レス) id: b4064f663e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セブンス・エイカン | 作成日時:2020年5月17日 20時