陸拾参話 ページ18
嫌な、予感がした。
幻天の呼吸を継承する者特有の勘だ。
この男からは、何かただならぬ気配を感じる。
『お初にお目にかかります、私は鬼殺隊・鷹風Aと申します。以後、お見知り置きを』
「………………同じく、冨岡義勇だ」
二人揃って自己紹介(一人は言葉足らず)をする。
現在地は、先程の初老の男性――――正和マサカズの屋敷に来ている。
ここら一帯でも、かなりの大金持ちなのだろう。
彼の屋敷は、この時代では珍しい洋風建築の建物で、かなりの使用人も雇っているらしい。
令和の時を生きていたAは、幾分かは慣れ親しんでいるが、大正男子の義勇にとっては異国に来たかのように落ち着き無い。
「すいません、本当に…………お仕事の最中にお声を掛けてしまいまして」
『いえ、お気になさらず。貴方が鬼についての情報を知っている、との事でしたので』
自分でも反吐が出るような、嘘偽りだらけの笑顔に嫌気がさす。
道端で会った時、【最近、人が失踪している事に心当たりがある】と言われたので、鬼の情報を提示しにもらいに来たのだ。
「はい、実は…………私はここら辺では数々の店に投資をする者でして。その店の従業員が最近、失踪しているのです」
『それは足抜け、とかではなく?』
「それも考えましたが、店の運営や従業員に関する事は私も知っています。足抜けする程に経営難などの問題が見当たらず……」
「………だから、鬼の仕業という事か」
「そうです。不確かな事ばかりですが、鬼狩り様の少しでもの力になれると思いまして……」
『分かりました、ありがとうございます。それでは、そちらのお店の場所等を聞いてもよろしいでしょうか?』
正和との話し合いを終える頃には、既に日は沈みかけていた。
Aは立ち上がると、本日行くはずの店へと向かう。
『ねぇ、義勇………この件についてどう思う?』
なんとなく、隣をゆく義勇に話しかけた。
「そうだな………(あの男の話に微かな違和感はあったが)鬼の頸を斬れば問題はない」
『んぅ………、そう思うかぁ』
うん、久しぶりに聞いたかも、言葉足らずのこの話。
推しである義勇の言葉だから分かるが、それ以外には伝わらないだろう。
『私はね、義勇が将来結婚出来るか不安になってきた』
「……………?」
いや、もしかしたらしのぶちゃんなら分かるかも………
推しと推しが結ばれる程、嬉しいものはないさ。
一人、聖者モードのAであった。
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尊い - 続きが速く見たいです (2022年3月26日 23時) (レス) @page11 id: 730adcd2c0 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - 続きが気になるぅぅぅぅうぅぅう!!!!更新楽しみにしてます! (2022年3月18日 8時) (レス) @page11 id: 04c952a5b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わんフル | 作成日時:2022年2月22日 8時