酒場のマスターはトリッパー (ページ14)

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13杯目ページ14

「人食い虎が絶対人を食わないなんて保証どこにもない。そもそもなんで三日後に虎が現れるなんて分かるのさ？」

どんどん言いますねー。。

「それに満月という言葉。虎はべつに満月だけに現れるわけじゃない。なのにマスターはわざわざ満月という言葉を用いた。具体的すぎる」

なんかやめて乱歩さん、もうお腹いっぱい。

けど私は乱歩さんの推理を静かに聞いていた。

「そして最後、探偵社員には伝えるな。
マスター、探偵社員の誰の元に虎がやって来るか知ってるんだね？」

どちらかというと虎の元に＂誰が＂やって来るか、だけど・・・

「見たところマスターには少なくとも未来がわかるような異能は持ってないみたいだし」

どっからどうやってわかるんだよ！

乱歩さん絶対他に異能あるでしょ‼

(いや実際、乱歩さん元々異能力者じゃないけど・・・)

「誰かから聞いたわけでもない、つまりマスターは異能とかそういうのじゃない。もっと別の何かで僕達のことを、いや、もしかしたらこの世界のあらゆることを知ったんじゃないの？」

そこで乱歩さんの推理ショーは終わった。

隣で静かに聞いていた社長は私を鋭い目で見た。

「ーーーっ、ふ、はは」

「「‼」」

「はははははははーーー‼‼」

私はいつの間にか大声で笑っていた。

二人は驚いた顔でこちらを見ている。

「いやー、まったく。すごいなぁ乱歩さんは！」

二人は驚いたせいか、声を出さない。

「すいません、いきなり大声で笑って」

「僕の推理、何か違ってた？」

「違ってないです。ただ一つだけ、＂この世界のあらゆること＂ってのはちょっと大袈裟すぎですね」

私はお腹を抱えて、笑いすぎて出た涙を手で拭いて答えた。

「これ以上は今はまだ話せませんね。
話しすぎて何かが変わっちゃったらいけない」

「・・・そうか」

社長は静かに答えた。

「そうだ乱歩さん」

「何？」

私は手招いて乱歩さんの耳元で囁いた。

「社長に新入社員については秘密で」

「なん、・・・分かったよ、マスターの三つ目のお願いだね」

「ありがとうございます、これで丁度ですね」

私は乱歩さんに笑いかけて言った。

「マスターはここまで読んでたの？」

「まさか、私にそんな頭はありませんよ。たまたまです」

乱歩さんは元の笑顔に戻って

「そっか！」

と言った。

「社長、ほらほらもう帰ろう！夜も遅いしさ！」

「待て乱歩、店主と何を

「いーからいーから」

社長は乱歩さんに扉の方へ押されて行った。