第246話:目から鱗 ページ10
「では水織に話し掛けること自体が目的、ということか」
ふむ、と頷くと、眼鏡を軽く押し上げて彼は言う。
「お前は他人の視線や表情には敏い方だろう。その眼で見て感じ取った違和感があるならそれは勘違いや気の所為ではないのだよ。」
「……!……はい、ありがとうございます」
「そんなこと気にするな」と一蹴されてもおかしくないような小さい相談だと思っていたのだけど。
思ったより、私と私の眼は彼に信頼されているらしい。
本題とはずれるけど、あ、ちょっと嬉しい。
「要は、水織は挨拶をされることに困っているというよりも、面識の無い男子生徒達がなぜそんな意味の無いことをしてくるのか理由が分からないからもやもやしているんだろう。
それが分かれば対処のしようもあるのだよ。」
「あっ…!そうです、それだと思います。さすがです、緑間さん」
まさに目から鱗。なんだか一人でぐるぐるしちゃってたけど、緑間さんが綺麗に言語化してくれた。
糸口はシンプルなところにあるのかもしれない。
「その理由が分からなければどうしようも無いが。
本人達に聞いたところではぐらかされそうな気もするのだよ。」
たしかに。あの感じでは、何か意図があったとして教えてくれそうも無い。
いや、むしろ「害意や敵意が無いからこちらから訴えることが出来ない」状況を作られている、と言った方が近いかもしれない。
「しかしそもそも俺は水織が話し掛けられるという現場を見ていないからな。話を聞いた限りでは、という印象でしかないのだよ。
このことは赤司には?」
「まだ言ってません。
赤司さんに言えばなんでも解決してくれそうな気もしますけど……悪いことをされてる訳ではないですし、あまり大事にもしたくなくて…」
最近の一件でかなり目立ってしまった手前、暫くは問題を起こすのは避けたいというのも本音だ。
なんでも言えとは言われたものの、自分で解決できるのなら自分でしたい。
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白虎 - 赤司くんはやっぱりカッコイイですね〜 (7月21日 10時) (レス) id: eab1ac402f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mae | 作成日時:2022年4月19日 19時