第278話:相談 ページ42
こうなればやっぱり、あの人の力を借りる必要がありそうだ。
……まだ少し、打ち明けるには早いかと思って後回しにしていたのだけど。
幼馴染でもない男の子が休日に家まで迎えに来て、出不精の私が気合いを入れた格好で一日一緒に出掛けるというのだから、間柄を説明しない訳にはいかないだろう。
*
いつも通りに授業を受けて、部活にいつも通り参加して、いつも通りテツ君と帰宅して、夕食と入浴を済まし、夜8時。
いつもの私がやらないことをする。
こんこんこん、とそのドアを3回ノックして、声を掛けた。
「……あの、今少しいいかな。」
はぁい、と力の抜けた返事を聞いてからドアを開け、静かに入る。
「話しておかなきゃいけないことと、相談があって。
今、大丈夫?
ーーーーお母さん」
私の母はファッションデザイナーである。
24時間365日、寝ている時間以外は服のことについて考え、何かに常に追われている。
割と売れっ子、らしい。
忙しい人なので、母が部屋に籠っている間は普段の私なら絶対に声を掛けない。
ただ、来春のコレクションの仕事が、昨日が山場だったと言っていたのを聞いたので。
今日ならいつもよりは話し掛ける余地があると踏んだのだ。
「大丈夫だけど、珍しい。
なに?学校関係のこと?」
「あ……えっと、ちょっと違うんだけど、」
椅子ごとくるりと振り向く母の顔は、朝見た時よりは元気そうだ(朝はかなり死にかけの顔だった)。
昨日が山場だったというのは本当で、今日は回復と、必要な後処理を行っていたのだろう。
……よし。これなら、いけそうだ。
「あの……私ね。
ちょっと前から、付き合っている男の子がいて」
「えッ!?」
母の手からシャーペンが転がり落ちた。
「それで、今週末に初めて二人でお出かけするんだけど、」
「ちょ……ちょっと待って!頭が追いつかないわ、」
椅子から立ち上がって両手を頬に押し付ける母。予想通り、しっかり驚いている様子。
やっぱり繁忙期間に言わなくてよかった。
「えっと、続き、話していい?」
「待ちなさい、そんな大事な話……ああ、お茶でも用意して飲みましょう。……やだわ、もう!」
そう言ってキッチンに向かう母。
「えっ、あの……お仕事はいいの?」
「いいに決まってるでしょ、こんなもの急ぎでもなんでもないのよ!娘の初彼氏との初デートの話より大事な訳ないんだから、」
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白虎 - 赤司くんはやっぱりカッコイイですね〜 (7月21日 10時) (レス) id: eab1ac402f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mae | 作成日時:2022年4月19日 19時