第240話:盛り ページ5
彼の腕の中で身を捩る私に、追い討ちをかけるように耳や首筋に軽く口付けしてくる。
音がしないくらい軽い感触なのに、どこからかゾクゾクする気持ちが込み上げてきて、段々昂る何かによって上がっていく熱をうまく逃がせなくなる。
やっていることは全然違うのに、まるで一昨日の夜みたいだ。
「あかしさ、んっ、…………っもう、
やだ………」
蕩けはじめた頭を上げると、すぐ上に彼の顔がある。
目が合うと赤色が僅かにぎらりと煌めいて。
「ん………っ」
重ねるだけのキスが降ってきた。
くっ付いて、少し角度を変えて離れる。
幾度か繰り返して、漸く気が治まったのか、「ふぅ」とわざとらしく息をついて体を最初のハグだけの状態に戻された。
「ダメじゃないか。
いくら煽り上手でもあんな声と顔をしては。
まだ朝なんだよ?」
「こっちの台詞ですけど!?」
なんで私がたしなめられてるんですか!
赤司さんのあんまりな台詞に憤慨する。
「まだ朝」は私が心の中で何回もつっこんでるし、あと煽り上手って何???
煽ってなんかないし…!
「これだから自覚なしは……、全く、ここまでするつもりなんて無かったのに。
朝っぱらからサカってしまうなんて、はしたなくて誰にも言えないね」
今までも赤司さんと2人きりの時にしたことで誰かに言える内容なんて無かったと思うけど……
この罪の着せっぷりはなんなんだ、堂々とした言いがかりが過ぎる。
その「やれやれ」って顔は何??
全然納得がいかない。というか私が擽られるの弱いって知っててそういう触り方する、赤司さんの方が絶対悪いでしょう!
「煽っても盛ってもいません!
そういう風に見えるんだとしたら、誰のせいでそうなってると思ってるんですか!」
「僕だね。Aの反応が可愛くてつい。
いや、けど本当に。
声を掛けた時点ではやましい気持ちは断じて無かったんだ。偶然2人きりで会えたから嬉しくなってしまっただけで。
それは信じて欲しい」
「………」
そんなにそこだけ強調されても……
なんでそんなキッパリ言い切るんだろう、逆に怪しいけど……
許していいんだかなんだか分からない。
だって絶対その無駄にキリッとした顔はふざけてる時のだもん。
「……。本当に、私に何か用事があった訳じゃないんですね?」
「そうだよ」
「じゃあ、どうして私に会いたかったんですか?」
そう聞くと、はた、と顎に手を当てて、赤司さんは考える素振りを見せる。
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白虎 - 赤司くんはやっぱりカッコイイですね〜 (7月21日 10時) (レス) id: eab1ac402f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mae | 作成日時:2022年4月19日 19時