第271話:デート ページ35
中学生らしからぬとよく言われる僕の、精一杯かつ多少不格好で中学生らしすぎる誘いを、彼女はまっすぐに受け取り。
むくっと上半身を起こして、差し出した僕の手を取り、はにかんでこう言った。
「もちろん、喜んで。
わたし、すっごく楽しみです。」
その時のAの嬉しそうな笑顔といったら、僕達が出会ってから見た表情の中で一番と言っていいほど、心からの笑顔で。
あまりの彼女の可愛さに、僕は口角を抑えて「良かった」と言うので精一杯だった。
眩しいこの笑顔を、僕が守らなければ。
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正直に言えば、Aとのデートの計画を考えていない訳がなかった。
今日たまたま切り出すきっかけがあっただけで、交際を始めたての恋人として次のステップに進むとしたら、と想像だけはしていたのだ。
当然、Aを狙う連中への対策も。
Aとの大切な初デートに一切手出しはさせない。
できるだけAにも気付かせない。
黒子には「目立つ行動は避ける」と言った手前いい顔はされないだろうが、連中の動きを静観してばかりでも居られない。
必要なのは相手の動きを読んで先手を打つこと。
後手にとにかく回らないことだ。
そういった意味を含めて、彼にはしっかり説明をしておかなければ。
味方に敵は作りたくないと言ったら、また茶化すなと拗ねるだろうか。
Aと決めたデートの日付は、来週の土曜日、部活の無い日。
それまでに考えること、やるべきことを数えれば、時間はありそうで無い。
…なに、やり遂げてみせるさ。
僕は赤司征十郎だ。
これまでの後手に回った失態をひっくり返すくらい、完璧にエスコートしてやろうじゃないか。
そうしたらAも僕を、恋人としてしっかり意識してくれるかもしれない。
まだ彼女の口から「好き」の言葉は引き出せていないが、デートの誘いに喜んでくれるくらいにはなった。
合宿の夜には彼女からのキスも受け取っているのだし、多少自惚れてもいいはずだ。
今回で確実に…とは言わないが、少しでも僕といて楽しいと思って貰いたい。
長期戦は覚悟の上。彼女が僕に惚れてくれるまで、守り抜いてみせよう。
気合い十分、準備は万全に。今回はかなり本気だ。
こうなった僕は誰にも止められないことは自覚している。
ひとまずは、Aの好みを把握するために少しずつ話そうと2人で決めたLINEでの毎晩の連絡。
うっかり浮かれ具合が出ないように気を付けよう。
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白虎 - 赤司くんはやっぱりカッコイイですね〜 (7月21日 10時) (レス) id: eab1ac402f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mae | 作成日時:2022年4月19日 19時