【煉獄杏寿郎】全力で救いたい！【トリップ】

拾玖 ページ21

そうして私は最終選別を迎えた。
鱗滝さんから預かった、日輪刀と厄除の面を携えて。

「ようこそ」

藤襲山。
時期外れの藤が盛りに咲いている。
幻想的なまでのその景色は、美しさと妖しさを醸し出していた。

「この中で七日間生き抜く。それが最終選別の合格条件でございます」

一見シンプルなルールだがなんとも過酷だ。
七日間という期間がまず長い。
…それに、鬼を斬るのも初めてだ。出来るだろうか。

「健闘をお祈りします」

その言葉に送り出され、鬼が蔓延る場所へと歩みを進めた。









「人間だぁっ！」

歓喜の声を上げる鬼。
藤で周りを囲まれ閉じ込められていた鬼は、とても飢えているようだ。

鬼は私目掛けて襲いかかる。
私は咄嗟に姿勢を低くし後ろへ避けた。

「女だぁ…喰わせろ…喰わせろ！！」
「あ、危ない！」

次々と鬼が襲いかかってくる。
いや何匹おんねん集団リンチか！！
鬼の動きは遅いため簡単には避けられるが。

そして隅にいる男の子に物凄く心配されている。大丈夫だから君も逃げなさい。うん。

さて、どうしようか。
このまま避け続けていては埒が明かない。
私はちらりと刀を見た。

斬れるだろうか。鬼の頸を。

「これは俺の餌だ！邪魔すんじゃねぇ！」
「うるせぇ！俺の女だ！」

誰がお前の女だ。
そう思いながら静かに仲間割れをし始めた鬼を眺める。

…斬れないはずないか。
だって鱗滝さんに鍛えてもらったんだもん。

『シィィ…』

思い切り息を吸い込み、血を体に巡らせる。
刀を握り締めて構える。

集中。

『全集中・水の呼吸 肆ノ型…打ち潮！』

ダンッと地面を蹴り、体に染み込んだ動きで頸を同時に複数切り落とす。
…よし、斬れた。

「これは俺の、餌だっ…え？」
「お、い…おれの、おれの頭が！」

鬼の頸はころりと転がる。
灰に変わり始めるまで、鬼は言い争っていた。斬られたことに気付かなかったのか。

「く、くびが！俺のくびが！いつのま、に…！！」
「くそ、くそ…！」

ノリで斬ったつもりが5匹一気に倒せちゃった。
鍛錬の成果が目に見える。

『成仏してくださいね…幽霊とかシャレにならない…』

恨みつらみを聞きたい訳では無いのでその場をすぐさま去る。

『君も、一緒に七日間生き残りましょうね！それでは！』

ついでに男の子にも声を掛ければ、顔を赤くした。

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