story41*貴方がいたので ページ46
.
「そろそろ帰りましょう。きっと太宰さんも寮に戻ってると思いますし」
お話しているうちにだいぶ気分が落ち着いてきた。そうだよね。太宰さんが死んじゃうわけないもの。
私は敦くんにそう声をかけ、1度探偵社に戻ってから寮へ帰った。さすがに国木田さんにはすこーしだけ怒られてしまったけど。
「太宰さん、いるのかな……」
太宰さんのお家の前でぐっと口を閉じてみる。
そして、開けた。
「あ、おかえり。A」
「太宰さん……!」
部屋の中には本……題名が物騒な本を手に薄く微笑む太宰さんがいた。
思わずぱっと笑顔になりかけよっていく。
「やけに機嫌がいいね。私に会えたからかな?」
「はい! 起きてから1度も会えなかったので。今度こそ本当に死んでしまったのかと思っちゃいました」
私がそう言うと、太宰さんは驚いたように目を見開く。そして……私の髪を、さらりと撫でた。
「どうしたの。……今日は素直だね」
「え? あ____」
はっとして、私の顔はみるみる赤くなる。
私ってば、太宰さんに会えたから機嫌がよくなったなんて言っちゃった……!?
羞恥心からわたわたしている私を見て、太宰さんはクスリと笑みをこぼす。私に視線を合わせ、言った。
「本当に君は可愛げがあるね。それだけ私の事が大好きだってことでしょう?」
「……そ、れは……」
そうです、と言いそうになって慌てて目を逸らした。
太宰さんの瞳は綺麗で、吸い込まれそうで、合わせていられない。
「わ、私今夜はもう寝ますので!!」
「ふふふ?」
分かってます。ワンルームのこの部屋に逃げ場なんて無いのだけれど……私はすぐに部屋着に着替え、布団の中に入ってしまった。
……だけど。
「あの、太宰さん」
「ん?」
1人で晩酌を楽しんでいる太宰さん。
私はひょこっと半分だけ顔を出し、太宰さんに視線を向ける。吸い込まれそうなその瞳に、精一杯の感謝の気持ちを伝える。
「昨日私潰れちゃったんですよね……その、色々ご迷惑をお掛けしました」
「迷惑なんかじゃないよ。……でも当分はお酒を控えた方がいいかもね」
「いえ、その……国木田さんのことも、ありがとうございました!」
しっかりとお礼と……おやすみを言って、私はまた布団に篭もった。
本当に、太宰さんがいてくれて良かった。
.
story42*同じようで異なる→←story40*恩人・福沢さん
911人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鈴蘭(プロフ) - ウナさん» 私も書いててひえええってなってます笑(?) (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - みそしる大臣さん» そんなドキドキをお届けできているなんて嬉しい限りです(^^) (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - SAKA0829093さん» ありがとうございます!ダラダラ更新で本当すみません… (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
ウナ - もうヤバイですマジでもうヤバイですよ!!!!ひええええってなります(?) (2019年4月3日 19時) (レス) id: 0bc8f10023 (このIDを非表示/違反報告)
みそしる大臣 - 夢主より僕の方が早くキュン死にしそうだ…心臓が持たない! (2019年3月30日 23時) (レス) id: 487407bef1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鈴蘭 | 作成日時:2018年5月25日 1時