story36*寝坊しました ページ41
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「んっ……ううん……」
暖かな日差しが窓から差し込み、瞼の裏まで照らし出す。
閉じかけた目を擦りながらキョロキョロと辺りを見回すと、もうとっくにお天道様がてっぺんに登っていた。
「お昼……あれ、昨日」
どうやって寝たんだっけ。
1度大きく伸びをして、昨日のことを思い出す。
ふと視線を落としてみると、身につけているのは薄い桃色の部屋着。太宰さんに買ってもらった服は脱いだんだっけ。
「そうだ、昨日は太宰さんと一緒にお出かけしたんだ。それで、帰ってお酒飲んで…………あれ?」
そこから先の記憶が無い。高いお酒開けて飲んだところまでは覚えているのだけれど……。
昨日は初の飲酒でちょっと気分が高揚していた。
もしかして酔って寝ちゃったのかな? なんて思いながら、あたりを見回して太宰さんの姿を探す。
「……いない」
けど、部屋の中には誰もいない。
もしかしてまた入水に行っちゃったのかな? 今日もお仕事あるはずなのに、太宰さんは変わらない。
そこまで考えて、ふと気づく。
「あれ? お天道様がてっぺんに……」
ぱっと顔を上げ、窓の外を見つめた。
太陽は空の真ん中にある。
……つまり、正午である。
「ち、遅刻っ!?」
太宰さんのこと考えてる場合じゃない!
私は大急ぎで支度をし、社員寮を出た。
携帯電話を確認するも、太宰さんどころか国木田さんや社長からすらも連絡が来ていない。
「お、怒ってるのかな……早く行かなきゃ」
お酒なんて飲むものじゃない、なんて固く心の中に近いつつ、探偵社への短い道のりを駆け抜ける。
この際お行儀の悪さなんて無視しなければ。寝坊で遅刻してしまうなんて社会人として失格だけど、開き直って諦めるなんて人間として失格なんだから。
結局、者に着いたのは寮を出てから10分後のことだった。
「遅れてすみません! 寝坊しました!」
扉を開けて開口一番、普段の挨拶よりもちょっとだけ大きな声で馬鹿正直に弁解する。
ぎょっとして視線を上げたのは書類整理をしていた敦くんと、敦くんに指示を出していたと見受けられる国木田さん。
「Aさん、おはようございます!」
「あ、敦くん……」
いつもと変わらない笑顔で挨拶を返してくれた敦くん。しかし、国木田さんは優しく微笑みかけてくれはしないだろう。
怒鳴られるのを覚悟で、私は国木田さんの目を見つめた。
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鈴蘭(プロフ) - ウナさん» 私も書いててひえええってなってます笑(?) (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - みそしる大臣さん» そんなドキドキをお届けできているなんて嬉しい限りです(^^) (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - SAKA0829093さん» ありがとうございます!ダラダラ更新で本当すみません… (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
ウナ - もうヤバイですマジでもうヤバイですよ!!!!ひええええってなります(?) (2019年4月3日 19時) (レス) id: 0bc8f10023 (このIDを非表示/違反報告)
みそしる大臣 - 夢主より僕の方が早くキュン死にしそうだ…心臓が持たない! (2019年3月30日 23時) (レス) id: 487407bef1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴蘭 | 作成日時:2018年5月25日 1時